私は傑作SFシリーズだと思うBabylon5ですが、 大きな不満を感じる点もあります。 その一つは、このシリーズに限らずに、 アメリカの作品に共通に見られる 「核兵器の描かれ方」です。
一般的に、アメリカのSF作品では、
核兵器の使用が安易に描かれる傾向があります。
もちろん「安易」と言っても拳銃とは訳が違いますから、
それが使用されるのはストーリーの山場なのですが、
その決断があまりにも気軽に行われています。
登場人物(実際には作者)の意識では、
核兵器は通常兵器の延長線上にあるものに過ぎないようです。
Babylon5では、Minbari戦争「唯一の勝利」と、
Shadow戦争のCoriana6の戦いにおいて、
核機雷が使われていますが、
他に対抗手段が無かったとは言え、
特に後者では何の躊躇いもなく、使用が決断されました。
それでも、例えば"Independence Day"の能天気さ加減に比べれば、
遥かにまともだとは思いますが。
また、本編の#66 "Z'ha'dum"とTV-Movie "Thirdspace"で、
核兵器を持ち込んだ本人が、それを使用後に生き残っているのは、
アメリカ人が核兵器の威力に対してあまりに無知である事を
示していると思います。
ほとんどのアメリカ人は、核爆弾を強力な通常爆弾程度にしか
理解していないようで、防護壁その他で割と簡単に
身を守る事が出来ると思っているのでしょうか。
そもそも、9.11でのビル崩壊の跡地を"Ground Zero"と呼び、
広島や長崎の爆心地になぞらえている事自体が、
彼らの想像力の欠如を物語っているのではないでしょうか。
やや論点が逸れますが、 この作品での核兵器は、強力な最終兵器として扱われており、 ほとんど登場しないStarTrekでの扱いとは、かなり異なります。 しかしこれは、別にStarTrekの方が反核的という訳ではなく、 StarTrek世界の科学技術水準では、 通常の核兵器はもはや強力とはいえない、というだけの話で、 核兵器の役割をしているのは「光子魚雷」等です。 この光子魚雷は物質-反物質反応を利用しているという設定なので、 静止質量が100%エネルギーに変る、熱核爆弾より遥かに強力な兵器です。 従って船体を直撃した場合、シールドが1%でもそのエネルギーを 通せば、船体は完全に破壊、というより蒸発してしまうはずで、 そう考えると、艦船同士の戦闘の映像描写がいかに現実離れしているか 解ります。 (別にStarTrekの悪口を書いているつもりはありません。 他の作品でも同様で、これもまた、 想像力の欠如の一例です。)
2005/8/6