当然ながらこの宇宙域全体の秩序に決定的な役割を果たしたBabylon5ステーションですが、 実は地球同盟内部では、この基地の意味は一貫して軽視されてきたようです。 初代司令官Sinclairが中佐というのも、軽視の現われではないでしょうか。 25万人という他のどの外宇宙コロニーよりも多い居住人口を抱える基地の司令官であり、 四大国を含む各国の大使と日常的に外交交渉を行わなければいけない立場の人間としては、 地位が低すぎると思われます もちろんSinclairの就任の裏には、基地の建設に多額の費用を支払った Minbariの意向があった訳ですが、 それならば彼の就任時に大佐に昇進させる事も出来たのではないでしょうか。
Babylon5と常に比較されるStar TrekシリーズのDS9ステーションの司令官Benjamin Siskoは、 赴任時点ではやはり中佐でした。 しかしDS9の場合、Siskoの赴任時点ではあくまで辺境の一ステーションに過ぎず、 重要度はそれほど高くありませんでした。 彼の赴任直後に、Gamma宇宙域への入り口となるワームホールが出現し、 DS9はその重要度を一気に増しますが、 同時にSiskoが「選ばれし者」になってしまったために、 別の司令官を赴任させる事は出来なくなりました。 また、この赴任時ならともかくこのタイミングで彼を昇進させるのは、 人事バランス上無理だったのでしょう。
二代目司令官のSheridanは大佐ですが、 Clark新大統領が基地を重視していたのなら自分の腹心を新司令官に据えるはずです。 Hague将軍によってSheridanの経歴が書き換えられ、 命令に素直に従う軍人とカモフラージュされていたとは言え、 それを鵜呑みにしてSantiagoの生前の指示通りに彼を司令官にしたのは Clarkが基地の意味を軽視していた現われで、 恐らくその過ちに気がついた事が、 公安省からJulie Musanteが派遣された事に繋がったのでしょう。 (#49 Voices of Authority) 結果的には、彼の軽視によってBabylon5は光の側の拠点として活躍できる事になりました。
そして三代目のLochley大佐ですが、 彼女の就任にはSheridan同盟大統領の意向が強く働いており、 権限もそれまでの副官Ivanova中佐とそれほど変わらない程度に縮小されています。 一方で惑星間同盟には地球の大使は参加していないようで、 ここにも地球の国際(星際?)社会軽視の姿勢が現われている気がします。 (Sheridanの同盟大統領という地位は、現在の国連事務総長のような立場です。 従って彼は地球の利益代表ではありえず、あくまで調整役のはずで、 本来なら別に地球の代表が会議に出席すべきですが、 Lochleyが出席している気配はありません。) さらに言えば、Lochley司令官の次席がCorwin大尉(相当)というのも 第一シーズンのIvanova少佐よりも地位が下な訳で、 これを見ても地球がこの基地をあまり重要視していない事が窺えます。
そもそもClark政権時代以前の第一シーズンの頃から、 Babylon5の維持は意味がないという内向きの意見が議会で声高に叫ばれている状況でした。 そして最終回、惑星間同盟から地球に返還されたBabylon5は、 その政治経済的な意味が薄れたとは言え、 保存される事なくあっさりと解体されてしまいました。 このようにシリーズ全体を通して見られる地球の国際社会軽視=内向きの政策は、 アメリカの政策をそのまま反映しているのではないでしょうか。