Babylon5 #10

#10 Believers

粗筋

医療室でスキャンを受けている異星人の少年Shonは気道の病気が悪化しており、 付き添っている両親は彼の運命を悲観していた。 二人は診察したFranklinに、息子をいかに大事にしているかを話し、 何とか助かる方法は無いかと尋ねる。 Franklinは手術によって水腫を取れば直ると説明するが、 それを聞いた両親はいきなり息子を連れて出て行こうとする。 驚いて手術は極めて簡単で安全だと説明するFranklinに、 自分たちの世界では身体を切り開かれるのは魂のない動物だけで、 手術をすれば息子の魂は失われると母親は言う。 そして父親は、自分たち神に選ばれし者は哺乳類である地球人とは違い 誓いを破るわけにはいかないと主張する。

Babylon5の司令室に、船内火災で動けなくなった民間輸送船Asimovから救難要請が入った。 Asimovが立ち往生しているのは海賊の出没する空域であり、 誰かがStarFury編隊で護衛する必要があるというIvanovaに、 Sinclairは始めGaribaldiを出そうとする。 しかしそれを聞いたIvanovaが自分は司令室勤務だけで満足だと自嘲するのを聞き、 彼は彼女にStarFury二機の編隊で救援に向かうように命じた。

Dr. Hernandeも加わってShonの両親の説得に当たったが、両親はかたくなに手術を拒んだ。 Franklinはとりあえず手術以外の治療法で時間稼ぎをし、 両親の説得を続ける事にした。
話し合いの後、FranklinはSinclairに会って、 Shonを助けるために自分に手術を命ずるように求めた。 彼は司令官が嘗てKoshを救うためにDr.Kyleに同様の命令をした事を持ち出すが、 司令官は彼に別の方法を探るように命じる。

Franklinの代替療法は上手く行かず、彼は改めて手術を提案する。 両親がなおも拒んだため、彼は二人の親権を停止して強引に手術を行うと言い出し、 Sinclairにその手続きを申し立てた。

Shonの両親はSinclairに面会し、自分たちへの支持を求めた。 彼らの種族はBabylon5に大使が居ないため、 彼らの利益を保護するのは司令官の責務であり、 彼は深刻なジレンマに陥る。 彼の態度に両親は失望し、他の大国の大使たちにすがる事にした。
二人と面会したG'Karは、 彼らの種族の国家はNarnにとって重用ではなく、 Narnはこのような他種族の問題に干渉しないと言って援助を断わった。 Londoは二人に同情を示しながらも、 顧問会議でこの問題を取り上げるにはそれなりの対価が必要で、 彼らにそれが支払えるのかと問い返した。 さらに彼らはKoshにも会いに行き、 もし自分が意思に反して手術をさせたら如何思うかと彼に訴えるが、 Koshはただ「雪崩は既に始まってしまった。 小石が意見を言ってもう手遅れだ。」と言うだけだった。
最後に彼らが訪問したDelennは二人に共感しながらも、 Minbariの宗教問題に他国が口出しできないのと同様に 他の文化の宗教の問題には口出しできないと言い、 FranklinとShonの両親のどちらも自分が正しいという信念を持っているのだと説明する。
その頃Ivanovaの率いる編隊はAsimovを発見していたが、 海賊の偵察機が接近しているのをスキャナーが捉えていた。

Sinclairは異星人の信仰に干渉できない事を理由に、 Franklinの手術を許可しない決定をした。 憤慨して詰め寄るFranklinにSincalirは、 自分の心情としては手術を許可したいが 司令官の立場としてはこの基地の安全を最優先に考える必要があり、 異星人の文化を否定するような決断を下せばこの基地の意義が失われる、 Shonの件は既に基地中に広まっており、 Koshの手術の場合とは事情が異なると説明した。

Shonの病状は悪化し、両親はSinclairの決定に感謝しつつ 息子に対して名誉を持って死を迎える事を誇りに思うと告げた。 しかし二人が立ち去った後、 Franklinは許可なしでShonの手術を行う事を決意し、 Hernandezもそれに同意して二人だけで密かに手術を決行する。

海賊の偵察機が反転して逃げ出したため、 Ivanovaは部下の機にAsimovを護衛させて自分は一般命令を無視して偵察機を追った。 彼女は戦闘で偵察機を撃墜するが、海賊の本隊が迫っており、 彼女は反転して逃れようとする。

Shonの手術は成功し、彼は健康を取り戻した。 しかし彼の病室で息子と再会した両親は、 彼が手術を受けた事を知ると態度を豹変させ、 駆け寄ろうとする彼を悪魔か何かのように突き放して追い払い、 何かを唱えつづけた。 泣き崩れるShonを抱きしめて、Franklinは途方に暮れる。
SinclairはFranklinの行為に激怒し、 彼に辞表を出すよう迫ったが、 Frankinは自分の行為は間違っていないと主張する。 そのとき医療室のHernandezから通信があった。 Shonの両親が落ち着いた様子で医療室に戻って来ており、 母親は彼らに向かって、Franklinの行為が善意から出たもので もしその権限があれば彼を許すだろうが 自分たちには権限が無いと話す。 そして両親は「旅立ちのローブ」でShonを包んで部屋に連れ帰った。 その様子を見たFranklinが機嫌よさそうに Sinclairに先ほどの発言の謝罪を求めると、 彼はこれで調子に乗るんじゃないと言い棄て、医療室を出て行った。
暫くしてHendrickが調べた Shonの種族の宗教のファイルを見ていたFranklinは、 「旅立ちのローブ」の意味を知ると慌てて医療室を飛び出し、 Shonの両親の部屋に向かったが遅かった。 彼らは蝋燭を並べた部屋の中のベッドに寝かせた息子を殺してしまっていて、 Franklinに対しこれは魂の抜け殻に過ぎず自分たちの息子ではないと言い張った。 その光景を見たFranklinは呆然として涙を流すしかなかった。

Franklinは責任を取って辞任を申し出るが、 Sinclairは今回は特例として不問に付した。

Asimovを護衛して無事に戻ってきたIvanovaに、 Garibaldiはなぜ命令を無視したのか尋ねた。 彼女は「命令より人命よ、当然でしょ」と答えるが、 Garibaldiはそうとは限らない、話せば長くなるが、と言う。
その頃Franklinは一人暗くなった庭園に座り、物思いに沈んでいた。


印象に残ったシーン、台詞


Memo

今回の話は一見すると物語全体の流れとは全く無関係に見える。 しかしShonの両親に会ったDelennの言葉は、 この話のテーマが「どちらが正しいともいえない二つの信念の対立」である事を示しており、 実はそれは物語全体のテーマと関わってくる事がずっと後の展開を知ると見えてくる。 (c.f. #66 "Z'ha'dum", #72 "Into the fire") もちろん普通の感覚では、Franklinの主張が正しくShonの両親の主張は迷信であるが、 これはあくまでも信念の問題である。 両親の主張がいかにも打破すべき迷信と感じるように描かれているのは JMSの作戦と思われる。 多分欧米から見たイスラムの風習を重ねているのではないだろうか。

Shonの母親がKoshに訴えかけた「自分の意思に反して手術をされたら」というのは、 彼女は知らないが実は現実に起こった事である。 ("The Gathering") そう考えると、Koshの答えはさらに深い意味があるのかもしれない。

Shonの両親と面会した大使たちは、それぞれいかにも彼ららしい反応をして 両親の求めを断わった。

司令室勤務が続いていたIvanovaは実はかなりストレスを溜め込んでいることが 今回明らかになった。

Shonの種族の名前は明らかにされないが、 彼らは哺乳類ではなく卵生で、 元々は魚類から直接に進化したらしい事が 医療データや両親の話から推察される。


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