Babylon5 #9

#9 Deathwalker

粗筋

TaliaはKoshに呼び出され、彼の重要な交渉への商業テレパスとしての出席を求められる。 彼女はPsi Corpsの許可を得るために交渉の内容を尋ねたが、 Koshは既に許可を得て支払いも済んでいると一方的に告げ、 「急ぎ足の時刻に」Red3区に来るように指示した。

ドッキングベイでNarnからの船の到着を待っていたNa'Tothは、 Babylon5に到着した一人の女を見るなり、 "Deathwalker!"と叫んで襲い掛かり、セキュリティーが止める前に 彼女を刺して重傷を負わせた。
被害者の女はMinbari宙域からMinbariの船でやってきており、 Minbariの身分証も持っていたが、実際にはMinbari人ではなかった。 Na'Tothの言っていた"Deathwalker"という名前には、 SinclairとGaribaldiは聞き覚えがあった。
Na'Tothは事情聴取の場で、これはDeathwalkerに対する血の復讐だと主張する。 嘗て彼女の祖父が住んでいた惑星で、Dilgerの戦術参謀Deathwalkerは さまざまな人体実験を行い、多くの人々が殺された。 彼女の祖父は逃れたが、脳に埋め込まれたインプラントによって徐々に正気を失い、 結局は死に至った。 Dilgerの侵略は30年前の事で、刺された女がDeathwalkerにしては若すぎるのでは、 というSinclairの疑問に対しNa'Tothは、血の復讐の誓いを立てた相手は必ず判ると主張した。 SinclairはGaribaldiに女の乗ってきた船内の捜索を命じた。
やがてG'Karが事件の謝罪に現れ、彼が保証人となってNa'Tothの身柄を引き取った。

TaliaはKoshに会い、彼の交渉に立ち会う事に同意した。 しかしまだ良く理解できないという彼女に、 Koshは「理解とは三つの刃を持つ剣だ。」と答える。 やがてAbbutという男が現れ、彼女は自分がテレパスで交渉に立ち会う事を説明した。 交渉の前に、KoshはAbbutの心をスキャンする事をTaliaに求めたが、 スキャンの結果、彼は全く何も考えておらず心の中は空っぽだった。 二人は交渉を始めるが、それは意味をなさない短い言葉のやり取りの様に見えた。

医療ラボでFranklinはSinclairに被害者の女の傷が異常な速さで回復しており、 彼女の種族が特定できない、と知らせた。 Sinclairが彼女はDilgerの一人Deathwalkerであると言うが、 Dilgerは30年前の戦争に敗れてほとんど姿を消し、 生き残った者も彼らの太陽が新星爆発を起こして全滅したはずなので、 Franklinは信じられなかった。 SinclairはDeathwalkerに関する記録を取り寄せた。
それによるとDeathwalkerは通称で本名はJha'durといい、 Dilgerによる2230年の非同盟惑星諸国への侵略戦争の指導者の一人で、 生物科学およびサイバー兵器の専門家であった。
記録の映像の人物と、目の前の女は確かにそっくりだったが、 本人にしては若すぎ、娘にしては年がいっていた。 また、冷凍冬眠していた形跡も認められない、とFranklinは言う。 そのときGaribaldiが現れ、船室の捜索の結果、 Jha'durのものに間違いないDilgerの軍服と正体不明の薬品が見つかったと伝える。 地球のHidoshi議員からSinclairに呼び出しが入ったため、彼は医療室を離れたが、 GaribaldiにJha'durの様子を見張り、彼女に関する噂を外に漏らさないよう命じる。

Na'TothはG'Karに謝罪するが、彼は彼女の振る舞いに理解を示す。 しかし彼の説明では、Jha'durは非常に重要な発明を持っており、 それを得るためにNa'Tothが待っていたNarnの議員がこの基地で彼女と接触するはずだった。 ところがNa'Tothの行動によってそれが出来なくなったため、 替わりにG'KarがJha'durと交渉を行い、 彼女を生きたままNarnへ護送するように政府から命じられていた。 その言葉にNa'Tothは怒りを見せて反発するが、 命令は復讐の誓いより大事であり 全てのNarn人は国家のために多くの物を犠牲にしている、 それにJha'durの発明を手に入れれば、あとはもう彼女には用がないので それまで復讐を待てと言って彼は彼女を宥めた。

Hidoshi議員はSinclairに怪我をした女が回復し次第地球に護送するように命じた。 Sinclairは彼女がJha'durである可能性に触れて抗議するが、 議員はJha'durはとうに死んでいると取り合わなかった。

FranklinがGaribaldiが見つけた薬品を調べていると、女が意識を取り戻した。 彼女はFrankinに飛び掛って薬品の調査を止めさせ、司令官を呼ばせた。 Sinclairは医療ラボに向かう途中でLondoに呼び止められ、 Deathwalkerに関する噂について尋ねられる。
医療ラボで女はSinclairに、彼女は確かにJha'dur本人で、 Minbariの戦士カーストのWind Sword氏族によって匿われて来た事を話す。 彼女によるとWind SwordはSinclairの事をよく話しており、 「彼が心に隙を持っている」と言っていたという。 彼女は不老不死の秘薬の研究を進めており、ほぼ完成させていた。 その結果彼女は現在も若いままで、 地球同盟の協力によってこの薬を完成させれば、 銀河中の種族がその恩恵を受けられると彼女は主張した。

「では柳は慎重に急がなくては。」とKoshが言い、 対してAbbutは「土星には環があるか?」と答えた。 こうして彼らの初日の交渉は終わり、 Koshは明日「憧れの時刻」に再開すると告げるが、 Taliaには全く交渉の意味が理解出来なかった。 彼女は移動チューブに乗ろうとするKoshを追いかけて、 交渉の間中Abbutの心の中は空っぽのままだし二人のやり取りは意味を成さないと訴えると、 Koshは「君は意味を探しているのかね?それなら歌ではなく、音楽に耳を傾けろ。」 とだけ答えた。 一方Abbutは戻ってきた彼女をバーに誘うが、 彼女の問に対しては、思い出すのは良くない、とだけ答えた。 その瞬間、彼女は暗い鏡張りの部屋に立ち尽くしているような幻覚を見た。 混乱しながら、彼女はその場を立ち去る。

SinclairはLennierに、Wind SwordがJha'durを匿って来たのは本当か尋ねた。 (このときDelennは基地を離れていた。) LennierはWind Swordは戦士カースト中でも最も武断的な氏族だが、 Jha'durのような人物を匿う事はしないのではと思うが 調べてみると答えた。

G'KarはJha'durの元に現れ、Na'Tothの行動を謝罪にした。 その上で彼は彼女がNarnに行って不老不死の薬を完成させるなら、 地球が彼女に払う額の3倍を払うと提案した。 彼女は、一時間以内にNa'Tothの首を持ってくるならその提案を受けても良い、と答える。 怒りを隠しながらG'Karが出て行った後、彼女は一人で大笑いしていた。

Sinclair, Ivanova, GaribaldiとFranklinの四人は、現在の状況について話し合っていた。 Franklinは彼女が実際にJha'durで、不老不死の薬の件もほぼ間違いないという。 Sinclairは、その薬を手に入れるため、 地球同盟政府は彼女を直ちに地球に送るよう求めている、と述べた。 GaribaldiはSinclairがその命令にあっさり従う様子なのに、苛立ちを見せる。 彼はいっそ彼女を非同盟惑星連合に引き渡して、薬は地球で研究を続ければよいと言うが、 Franklinは薬の成分は複雑で、彼女が居なければ完成できないだろうと言った。 結局Sinclairは彼女を地球に送る事を決断し、 なおも反対するGaribaldiに、 「彼女の薬によって彼女がこれまで殺した以上の人々が救われる」と 自分に言い聞かせるように答える。

G'KarはSinclairの決定に関する情報を掴み、 非同盟惑星連合のKalika大使に連絡を取った。 そしてJha'durの件を彼女に伝えた。
SinclairはJha'durを船まで護衛する準備をしながら、 彼女になぜ彼女の薬を他の種族に与える気になったのか尋ねた。 Dilgerを打ち破った地球が戦利品を得るのは当然だと言った彼女はさらに、 それによってこれまで憎悪の対象であり自分を除いて滅びたDilgerが永遠に記憶されて、 銀河中で感謝され続けるだろうからだと答えた。
しかしJha'durと護衛隊は途中で非同盟惑星諸国の大使たちに阻まれた。 彼らは直ちに代表者会議を開き、Jha'durの扱いを協議するように求め、 Sinclairはそれを受け入れて一行は引き返す。 Jha'durは彼に、「心に隙があるわね」と皮肉を言う。

次の日再びKoshに会ったTaliaは、 交渉の立会いを続けられる自信がないと、彼に言う。 しかしKoshは契約を盾に取り、二日目の交渉にも彼女は立ち会う事になった。 やってきたAbbutが彼女の手にキスをしたとき、 彼女は心の中で自分がコンピュータマトリックスの中に立っているようなシーンを見た。

代表者会議が開かれ、Kalika大使はBabylon5で戦犯Jha'durを裁く法廷を開催するように求めた。 Sinclairの心積もりでは、CentauriとNarnは反対に回るがVorlonはいつものように棄権し、 自分と名誉を重んじるMinbariが賛成に回って、 結果的に惑星連合がキャスティングボードを握るはずだった。
予想通りLondoは自分たちはDilger戦争とは無関係だったと言って反対した。 G'Karは法廷をNarnで開くという条件を出したが、 Kalikaが受け入れなかったため、やはり反対した。 Sinclairが賛成、Koshは棄権し、Lennierの番になった。 Lennierは困惑した表情で、 Minbariは戦争に関わらなかったので彼女を裁く権利はないと言って反対の投票をし、 動議は否決された。 Kalikaは怒って会議からの脱退を宣言し、部屋を出て行った。
会議の後、LennierはSinclairに彼の投票について詫びた。 彼の説明では、Jha'durをWind Swordが匿っていたのは事実で、 政府はそれを知らなかったが、地球との戦争の際にWind Swordが彼女が開発した 兵器を使うように提案して来て始めてそれを知った。 政府はさすがに彼らの提案は却下したが、Minbariが彼女を匿っていた事が公になる事を恐れ、 今回の動議に反対を命じられたという。

ジャンプゲートからDraziの戦艦(SunHawk)が現れ、指揮官はJha'durの身柄引渡しを求めた。 Ivanovaはステーションの防御砲を起動し、Drazi艦は攻撃は思い留まったが、 さらに次々と別の国の戦艦が現れ、Babylon5を包囲した。
SinclairはKalikaと会談し、Jha'durの開発した薬の事を説明する。 結局、薬の開発に非同盟惑星連合の科学者を送り、 完成後にJha'durを引き渡すという妥協案で、合意を得た。

「一筆描いただけで筆の芸術が保証される訳ではない。 解ったかね、Wintersさん?」 こうKoshが言ったとき、Taliaは突然暗い部屋に一人佇んでいる幻覚を見る。 ドアから男が入ってきたが、その顔は陰になっていて見えない。 二人がゆっくりと歩み寄ったそのとき、 男は手にしていた鈍器を彼女に振り上げた。 彼女が悲鳴を上げると、場面はまたBabylon5に戻り、 悲鳴を上げている彼女を周囲の人々が怪訝そうに眺めていた。
Koshに商談の終わりを告げられたAbbutが帽子を取ると、 その下の彼の頭は機械化された脳が見えていた。 彼はそこから情報クリスタルを抜き出してKoshに手渡し、 「何時か一緒に飲もう」と唖然としているTaliaに声をかけてその場を後にした。 「一体何者なんです、その中身は何です?」というTaliaの問に対し、 「記憶、驚き、恐怖、何時か役に立つ。」とだけKoshは答えて立ち去る。

再び地球へ彼女を送るMinbari船に向かう途中、Jha'durはSinclairに 不老不死の薬の鍵となる成分は生きた生物から抽出しなくてはならず、 必ず犠牲者を伴う事を明かした。 そして、「誰かが不死を得るためには誰かを殺さなくてならず、 互いに殺し合いをして生き続けるのだ。 我々を怪物と思っているあなた方も、我々と同じようになる。」と言って 勝ち誇ったように船に乗り込み、ステーションを後にした。
彼女の乗ったMinbari Flyerがジャンプゲートに向かうのを 各国の大使たちが見守っている観察ラウンジに、Koshが現われた。
突然ジャンプゲートからVorlon戦艦が出現し、 一撃でJha'durの乗る船を破壊して去って行く。 Koshは「君たちは不老不死にはまだ早い」と言い捨て、ラウンジを出て行った。

SinclairとGaribaldiが今回の事件について話している所にTaliaが現れ、 KoshとAbbutとの交渉に立ち会った経験について報告し、 彼女が心の中で見たイメージを説明した。 4年前に彼女はある殺人鬼のスキャンを行い、その男の脳内のイメージにひどい恐怖を覚えた。 今回、そのときのイメージが呼び覚まされた、という。
GarobaldiはAbbutを知っており、彼は"VCR"という 他人の脳波も含め、全てを記録する生きたレコーダーのような種族だという。 Sinclairは、Vorlonは地球人のテレパスを疑いの目で見ており、 おそらく彼女の心の最も奥底にある恐れについて調べて 後で利用するつもりでは、と推測した。


印象に残ったシーン、台詞


Memo

Jha'durがSinclairに言っていた「心に隙がある」という言葉は、 "The Gathering"の最後で、 Minbari人の暗殺者が言っていた言葉である。 すなわち、あの暗殺者を送ったのがWind Swordだった事を示唆している。
なお、Minbari戦士カーストの五大氏族は、 Star Rider, Fire Wing, Wind Sword, Moon Shield, Night Walkerである。

KoshがTaliaに言った、 「理解とは三方の刃を持つ剣だ」という言葉は、 これからも形を変えて何回か現われるVorlonの諺である。

G'KarはJha'durにあれほど卑屈な態度を示しながら、 Na'Tothの首を要求されると憤然として出て行った。 これは同胞の血の絆を何よりも大切にするという Narn人(少なくともG'Kar)の性格を表している。

Jha'durを地球に護送するというSinclairの決定をG'Karが嗅ぎ付けたのは、 スパイによる情報だろうか? もしかするとGaribaldiが意図的に情報を洩らしたのかもしれない。
あるいはSinclair自身が地球本部の決定を阻止するためにわざと洩らした可能性もある。

非同盟惑星連合代表のKalikaは、どうやら#7 "The War Prayer"で 登場したAbbaiの大使らしい。

KoshとTaliaとの平行エピソードは、かなり解釈が難しい。 Vorlonがテレパスを警戒している、というSinclairの推測も、 ずっと後に判明する事実からするとはたして正しいか疑問である。 KoshがAbbutから受け取ったデータクリスタルは、 恐らく後のエピソードに繋がるべきものなのだが、 この後でTaliaに関する設定変更があったらしく結局そのようなエピソードは無かった。


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