Babylon5 #54

#54 Severed Dreams

粗筋

地球の状況悪化に伴って、Babylon5から脱出しようとする者が急増し、 外交レーンも塞がっているために、 Londoも一般人の長蛇の列に並んでいる。 彼は隣の地球人に、 混乱の真の理由は警備を任されたNarn人たちのせいで、 彼らはのろまで誰かが見張っていなければ仕事が出来ないのだと 罵っていた。 そのときやって来た警備のNarn人は、LondoのIDカードのデータが コンピュータに登録されていないので出港手続きできないと告げ、 怒ったLondoに数時間待つように求めた。

その頃Omega級戦艦Alexanderは、 大統領に対する反逆の罪で地球を追われ、 Hyperion級巡洋艦Clarkstownの執拗な追撃を受けていた。 敵の砲撃によって回転部の後部が大きく破損して、 人工重力を失いかねなくなり、 艦長代理のRyan少佐は部下から、 周囲に展開しているStarFury編隊を置き去りにして亜空間に逃げるか、 Clarkstownを破壊するかの選択を迫られる。 これ以上同胞を殺したくないと拒んでいたRyanだが、 遂に艦尾主砲での砲撃を命令し、Clarkstownは一撃で撃沈される。 部下に行き先を尋ねられたRyanは、 唯一の安全な場所であるBabylon5へ向かうように命じた。
Alexanderからの通信を受けたBabylon5のSheridanは、 Ivanovaらと対応を協議する。 ISNでは火星政府が地球のClark大統領の戒厳令布告に従わない、 と宣言した事を伝えている。

LennierはFranklinを到着ベイの一角に連れて行き、 負傷したMinbari人の治療を求める。 彼は非同盟惑星諸国で調査活動をしていたRangerだったが、 賞金稼ぎに命を狙われており、 Narn人による基地内の警備が厳重で誰を信用していいのか判らないと Delennは訴える。 そのとき、物陰から現れたG'Karが協力を申し出て、 彼自ら負傷者を医療室に運んだ。

Alexanderがジャンプゲートから出現し、 SheridanらはBabylon5と外部との通信を遮断して、 この事を地球に伝えられないようにする。 そして司令室のスタッフに、 Alexanderの乗員は当局に追われているが 自分たちと同じく愛国者であり、 彼らを出来るだけ助けるようにと求めた。

Delennは医療室で、負傷したRangerから報告を聞いていた。 彼は、Centauriの侵略に怯える非同盟惑星諸国が、 個別にShadowと手を結び、お互いに戦争を始めていると話す。 対してGrey評議会は、異種族の事は自分たちには関係ないとして 事態を静観していると聞かされたDelennは、 自ら直接Grey評議会に乗り込む決意をする。

Babylon5にやってきたRyan少佐から、 Hague将軍はOrion7での会議からの帰路に待ち伏せに遭って殺された と聞かされ、Sheridanは絶句する。 戒厳令下の地球では真実が知らされず、 多くの市民は治安が回復したために大統領を支持しているという。
戒厳令に従わない火星植民地に対しClark大統領は爆撃を命令し、 多数の死傷者が出る。 それまで反政府的な動きを伝えるのを控えていたISNだが、 急遽スタジオに入ってきたアナウンサーが キャスターの制止を押し切って、 火星攻撃に対する抗議としてProxima3とOrion7の外宇宙コロニーが 地球同盟を脱退した事を伝え、 さらにこれまで伏せられていたある事実を明らかにしようとする。 しかし直後に治安部隊が放送局に突入し、放送は途切れた。
まもなくRyanが呼んだ新たなOmega級戦艦Churchillが現れ、 艦長のHiroshi大佐は、自分たちの出身地のOrion7は独立を宣言した、 と知らせ、 さらにBabylon5に大統領派の艦隊が向かっていると告げた。 Sheridanは指令スタッフの意見を聞いた上で、 Babylon5も彼らと行動を共にする事を決断する。

DelennはLennierとG'Kar, Ivanovaに見送られてBabylon5を出発し、 Grey評議員の乗る戦艦へと向かった。

重大発表を行う前に自室に寄ったSheridanは、 地球にいる父親に連絡を取っていた。 これからしばらくは連絡できないかもしれないと告げる彼に、 状況は解っていると父親は答え、 自らの信じる道を進むように彼にアドバイスした。 そして自分が教えた「戦いは仕掛けるな、しかし始まったらやり抜け」 という言葉を息子にもう一度思い出させる。

Grey評議会の戦艦に着いたDelennは警告をものともせずに評議会に押し入り、 彼らを厳しく非難する。 そして、「決断ができないなら、予言通りに評議会は分裂すべきです。」 と言い捨て、評議会を後にする。 彼女に従って5名の評議員が退席した。

SheridanはDraalのホログラム装置の助けを借りて、 Babylon5の地球同盟脱退を基地全体に宣言する。 そして攻撃に備えて、全てのStarFury中隊の出動を命じた。 Sheridanの宣言を聞いた後も司令室に留まるCorwinに、 本当に良いのかとIvanovaは尋ねると、 驚いたがこれでよかったと彼は答える。 Ivanovaは編隊の指揮を取るために自ら出撃する許可を求め、 初めSheridanはそれを却下するが、 地球への忠誠を捨てて敵艦を攻撃する命令を出す以上、 指令スタッフが自ら前線に立つ事が必要だという彼女の主張を結局認める。

ジャンプゲートから地球同盟の2隻の戦艦AgrippaとRoanoke, そして2隻の巡洋艦が出現し、 Babylon5と2隻の戦艦に降伏を要求する。 対してSheridanは、 「君達の行使しようとしている命令は地球同盟憲章に反した 違法命令であり、攻撃するなら受けて立つ」と答え、 ついに地球同盟艦同士の戦闘が始まった。
StarFury同士、さらに戦艦同士の激しい戦闘が続き、 突撃艇がBabylon5の防御砲を掻い潜ってBrown95区の外壁に到達する。 Garibaldiが率いる保安部隊がBrown95区に向かい、 それに加わったNarn人部隊は、 彼が設けた防御線を無視して先に突撃して行く。 外壁を爆破して侵入してきた地球の突撃部隊と、 Narn部隊との激しい銃撃戦が始まった。
戦艦Churchillはメインシステムが被弾し、ブリッジも炎上していた。 Hiroshi艦長はもはやこれまでと、敵艦Roanokeに自艦を体当たりさせ、 両艦とも爆発する。 その様子に気を取られたIvanovaは、 Agrippaに激突する寸前にStarFuryから脱出する。
AlexanderとBabylon5の両方からの集中砲火を浴びたAgrippaは制御不能になり、 Sheridanが降伏を求めた直後に爆発した。 基地内部に突入した突撃部隊と、 地球人-Narn人混成の保安部隊との白激戦は未だ続いていたが、 SheridanはCorwinに援軍を送るように命じ、 第一波の攻撃は何とか撃退したものの、 もはや基地の防御はボロボロだった。 その直後、ジャンプゲートから第二波の敵艦隊が現れて降伏を求め、 Sheridanは天を仰ぐ。
そのとき新たにジャンプポイントが開き、3隻のMinbariのSharlin級戦艦と Delennの指揮するWhiteStarが現れた。 彼女は、Babylon5はMinbariの保護下にあり、 ここを立ち去らねば攻撃すると脅迫し、 勝ち目のないと悟った地球同盟の攻撃艦隊は去って、危機は回避された。
基地内部での白兵戦も、保安部隊の勝利に終わったが、 双方に多くの死傷者が出ていた。

Ryan少佐はSheridanのオフィスに別れの挨拶に訪れ、 母艦を失ったChurchillのStarFuryをBabylon5で受け入れるように頼んだ。 そのとき司令室からDelennが基地に戻ってきたと知らされたSheridanは、 彼女を迎えに行こうとして、制服を来ていない事をRyanに注意される。 彼は、「こんな日にはこの制服を着る気になれない。 全てが片付くまでは、この制服を着ない。」と答えた。
NightWatchらを地球に送還するためにドッキングベイがごった返す中で、 戻ってきたDelennにSheridanは、 「あなたが現れたときこそ、人生最良の瞬間だった」と礼を述べる。
対してDelennは、「ここは私の家同然ですもの、見捨てたりはしないわ」 と答えた。
Ivanovaに即されてZocaloに現れた彼らに、 住民たちは暖かい拍手を浴びせた。


印象に残ったシーン、台詞

"Three years... for three years I warned you this day was coming. But you would not listen. Pride you said, presumption, and now the Shadows are on the move. The Centauri and the younger worlds are at war, the Narns have fallen, even the Humans are fighting one another. The pride was yours, the presumption was yours. For a thousand years we have been awaiting the fulfillment of prophecy, and when it finally happens, you scorn it, you reject it, cause you no longer believe it yourselves. 'We stand between the candle and the star, between the darkness and the light.' You say the words but your hearts are empty, your ears closed to the truth, you stand for nothing but your own petty interest. `The problems of others are not our concern.' I do not blame you for standing silent in your shame, you who knew what was coming, but refused to take up the burden of this war. If the Warrior Caste will not fight, then the rest of us will! The Council has lost it's way, if it will not lead, if we have abandoned our covenant with Valen... then the council should be broken! As was prophesied. We must stand with the others now, before it's too late. Between the Worker Caste and the Religious Caste we control two-thirds of our forces. And to you I say: Listen to the voice of your conscience. Break the council, come with me, our time of isolation is over. We move now, together, or not at all!"
三年間も・・・あなた方にこの日が来ると警告し続けた。 しかし無視された、傲慢な私の憶測だと。 そしてShadowが動き出し、Centauriたちは戦争を始めた。 Narnは陥落し、地球人までが戦いを始めた。 傲慢も憶測もあなた方の方です。
千年の間私たちは予言の実現を待っていた、そしてついに実現したとき、あなた方は拒んだ、 自分自身を信じられずに。
「私たちが立つのは蝋燭と星の間、そして暗闇と光の間。」 そう唱えても心は空っぽだわ。 真実に耳を塞ごうとしている。 あなた方は自分たちの利益しか考えていない。
「他人の問題は我々には関係ない。」 不名誉のまま沈黙を守る事は責めません、この先戦争の重荷を負う以外に無い事を 知っているでしょうから。 戦士カーストが戦わないのなら、私たちが戦うわ。
評議会は方向性を失った。 導かないのなら、Valenとの誓いを捨ててしまったのなら・・・、 評議会は分裂すべきです!・・・予言された通りに。
手遅れになる前に他の者たちと手を取り立ち上がるのです。 労働者カーストと聖職者カーストで、評議員全体の2/3になるわ。
最後に言います。 良心に耳を傾けなさい。 評議会を離れ、ついて来て。 孤立している時代は終わりました。 動き出すのです、今こそ、その時です!
-- Grey評議会へのDelennの最後通告

"Only one human captain has ever survived battle with the Minbari fleet. He is behind me. You are in front of me. If you value your lives, be somewhere else."
Minbari艦隊と戦って生き残った地球人大佐(これは誤訳で、「艦長」とすべきである。)はただ一人、 彼は私の後ろに居る。 あなた方は私の前に居る。 命が惜しければ、ここから消えなさい!
-- 第二波の地球軍艦隊に対するDelennの返答


Memo

DelennとG'Karが初めて会ったのは、この話の4年前。 従って "The Gathering"よりも 1年以上前になる。 (実は、彼らはずっと以前の地球-Minbari戦争の最中に一瞬出会っている。)

DelennとSheridanとの間に初めてはっきりと恋愛感情が現れたのは、 "Confessions and Lamentations" の最後で、Markab人が全滅した後にDelennがSheridanの胸で 泣き崩れた辺りと思われる。 同じ回の少し前に、 SheridanがDelennに誘われてMinbarの食事の儀式に参加した。 そして今回の戦闘終了後の二人のやり取り ( Sheridan 「あなたが現れたときこそ、人生最良の瞬間だった。」 Delenn 「見捨てたりしないわ、大切なパートナーですもの。」)、 さらに#55 Ceremonies of Light and Darkでの彼の告白で、 急速に深まっていく。

最初の攻撃でジャンプゲートから現れた地球同盟の大型艦は、 Omega級戦艦2隻(Agrippa, Roanoke)とHyperion級巡洋艦2隻。 そのうち AgrippaとRoanokeは破壊されたが、Hyperion級の運命は不明。 Babylon5との砲撃戦で戦うには、Hyperion級では戦力不足なのだろう。

ChurchillはAlexanderと比べ戦闘前のダメージがなかったにもかかわらず、 戦闘によって破壊されてしまった。 Hiroshi艦長には「(嘗ての)味方相手の戦闘」の 経験がなかったため、戦い方にためらいがあったのだろうか。 あるいは、Hague将軍の艦だったAlexanderの方が、 植民星の艦であるChurchillより、 同型艦でも装備が上だったのかもしれない。

Alexanderを指揮していたのが少佐であるRyanだった理由は不明である。 普通に考えると、たとえ将軍の乗る旗艦であっても艦長は別に居り、 従って大佐が艦長のはずである。 それにRyanの階級は"Major"であり、第一シーズンのIvanovaの階級 "Lieutenant Commander"と名称が異なっているのも謎だ。

前話でのIoでの砲撃戦の時点で、 Hague将軍は生きていたのだろうか。 つまり、彼が待ち伏せされたOrion7の会議は、 Ioでの砲撃戦の前にあったのか、それともIoを脱出した後に Orion7に向かったのだろうか。

上に英語と日本語訳の全文を掲げたGrey評議会でのDelennの演説の中で、 「労働者カーストと聖職者カーストで、評議員全体の2/3になる」 というくだりは誤訳のような気がする。 この時点ではGray評議員のうち4名が戦士カーストになっているから、 人数としては5名では2/3にならない。 英語の"force"はここでは艦隊の意味で、 二つのカーストで全艦隊の2/3が動かせるという意味だろう。 それによって、戦士カーストが居ないのにDelennに従ってMinbari艦隊が Babylon5防衛に現われた理由が説明できる。

Ivanovaが自らStarFury編隊を率いると言い出したのは、 Corwinが自分たちの側につき、司令室に残ったのが きっかけになっていると思われる。 彼が居なければ、彼女自身が司令室に残らねばならなかっただろう。

Babylon5の防御力は、#32 "GROPOS" において「戦艦とも互角に戦える」ほどに増強されている。 それを聞いたIvanovaは、「それを確かめる日が来ないと良いですね。」と Sheridanに言っていたが、正にその日が来てしまった事になる。

外壁を爆破して突撃班が侵入してくるシーンだが、本当はおかしい。 回転によって人工重力を得ているBabylon5では、 外壁は床側になっているはずで、 本来なら床が爆破されて、 そこから這い出してくる格好になるはずである。


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