Babylon5 #56

#56 Sic Transit Vir

粗筋

朝の司令室に、上機嫌で入ってきたIvanovaを見て、 部下たちは皆、驚きの表情を浮かべる。 入ってきた彼女は、全裸だった。 初め何も気が付かずに、指示を出した彼女は、様子がおかしいのに気が付いて 自分の身体に目を落とし、大声で悲鳴を挙げた。

彼女は自分の悲鳴で、悪夢から目を覚ました。 そのときちょうどコンピュータが、起床時間を告げる。

Centauri王宮の玉座の間では、 Virが衛兵の目を盗んで空の玉座に近づき、 そっと触ってその感触を楽しんでいると、 背後から声を掛けられて慌てて飛び退いた。 それは宮廷大臣で、彼はVirのMinbariに関する報告書を、 皇帝が誉めていたと告げる。 しかし同時に、大臣はLondoが報告書に手を加えた事に気づいていて、 次回からは真実のみを報告するように求めた。 Babylon5経由でMinbariへ戻るようにVirに命じた大臣は、 Narn人に関する新しいジョークを言い、 二人は大笑いするが、 実際にはVirは何が可笑しいのか理解できなかった。
控え室に入ったVirの前に居たのは、その「部屋一杯のNarn人」だった。 彼は黙って彼らの前に立ち尽くす間に、別のNarn人が扉を閉める。

食堂で、Ivanovaは朝食を席に運びながらSheridanに、 このところずっと悪夢に悩まされていると訴えるが、 さすがに今朝の悪夢の内容は誤魔化した。 Sheridanは、地球からの独立という大きな変化を、 頭では受け入れても気持ちの整理が付いておらず、 それが潜在意識に働きかけているのだと分析し、 いずれ落ち着くだろうと言う。 しかし、何気なく彼が喩えで言った悪夢の例が、 彼女の今朝の夢の内容を偶然言い当ててしまい、 彼女はさらに落ち込む。

Londoは自室で、大騒ぎをして害虫を叩き潰そうとしていた。 虫が大嫌いな彼は、直ぐに虫退治に来るように保守班に要請していたが、 人員が足りないとすげなくあしらわれ、 遂には剣まで持ち出してやっと一匹殺すが、 まだ他にもいるようで、彼は恐ろしい顔で立ち尽くす。 そこにたずねて来たCentauriの若い娘を見て、 彼は表情を一変し、彼女を愛想良く迎え入れる。 同じ頃、Babylon5に本星からもどって来たVirが到着するが、 Londoが迎えに来ていなかったので一人で彼の部屋に向かう。

Sheridanは通りかかったDelennと、しばらく最近の情勢について 当たり障りのない話をしてから、 彼女と今晩二人で会いたいと、本題を切り出した。 初め彼女はその意味が解らず、 今も二人で会っているのではと答えるが、 彼は以前のお返しとして 自分の部屋での夕食に彼女を招待したいと説明する。

部屋にやってきたVirに、LondoはCentauri王宮の様子を尋ねた後で、 びっくりさせる事があると言って、奥の部屋に隠していた 先ほどの女性を引き合わせる。 彼女は、Virの許婚のLyndistyだった。
彼女との結婚は、双方の両親同士が取り決めたもので、 本人同士は初対面だったが、 彼女はVirの事を出世街道を進むホープとして聞かされており、 彼を深く尊敬して愛していた。

Zackはこの所ステーションを経由するNarn人難民が異常に多いのに気が付き、 彼らの書類を調べた所、 MinbariのCentauri大使館の"Abrahamo Lincolni"という人物が 発行した事になっていると、司令室のIvanovaに報告しに来た。
その頃VirとLyndistyは庭園に居た。 本当は恋愛結婚の方が良かったし、自分は結婚相手にはふさわしくないと 言うVirに彼女は、 二人の結婚はもう全てが整っており、もし彼が自分を愛してくれなければ 自分は形だけの妻になってしまう、 それに彼はすばらしい男性で、 自分もその彼にふさわしい妻となるように努力すると答え、 彼に熱いキスをした。
しばらくしてメロメロになりぼーっとしたVirは、 Ivanovaに呼ばれてやってきた。 彼女の問に対しVirは、書類を偽名で発行したのは自分である事を認め、 絶望的状況に置かれているNarn本星から、 より条件のよいCentauri本星の労働施設に 彼らを送って助けているのだと説明する。

Sheridanの部屋のキッチンは乱雑に散らかっており、 彼はそこで作った料理をDelennの前に運んだ。 自分はGaribaldiのように料理が上手ではないので、その分を量で補うと 言い訳をする彼に対し、Delennはその料理を儀礼的に褒めるが、 実際に一口食べて、彼女は何とも複雑な表情をする。 そして壁の絵を褒めて彼の注意を逸らせた隙に、 傍にあった調味料を振る。
その頃VirとLyndistyは、Sheridanの部屋の直ぐ下の階の通路で、 突然剣を持ったNarn人に襲撃された。 VirはLyndistyを庇いながら反撃するがやがて床に倒れ、 今度は騒ぎを聞きつけて駆けつけたSheridanと Narn人との格闘になった。 結局Narn人の襲撃者は、Zack率いる警備班の警告を無視して "Da'tsa Shon'Kar!"と叫んで剣を振り上げ、その場で射殺された。

IvanovaはSheridanの怪我が大した事がないと知って安心するが、 殺されたNarn人が最後に叫んだShon'Karという言葉を聞いて それが復讐の誓いである事に気が付いた。 彼女は記録を調べてからVirを再び呼び出し、 彼を襲ったNarn人は一族の復讐の誓いを立てており、 その兄弟もBanylon5に来ているので、 まだ彼の命が狙われていると教える。 そしてNarn人にそこまで付け狙われるとは一体何をしたのかと尋ねるが、 彼は心当たりがない様子だった。 それどころか上の空のVirは彼女に、女性はどうしたら「喜ぶか」を尋ね、 その種の話題に弱い彼女はうろたえる。 さらにCentauriの性習慣について説明しだした彼を Ivanovaは慌てて話を打ち切った。

再び庭園にやってきて考え事をしているVirを Lyndistyが探しに来た。 二人は先ほどの襲撃事件の話をしているうちに、 彼は彼女がNarn人を生きる価値のない劣等種と考えている事を 知って唖然とする。 彼女はその考えを当たり前のように繰り返し、 彼を部屋に連れて行って自分の「贈り物」を見せた。 それは縛られたNarn人で、先ほどの襲撃者の兄弟だった。 そのNarn人が付けてきたのに気が付いて騙して捕えたと彼女は説明し、 彼にその男を彼女への愛の証として殺すように求める。 実は彼女の父親はNarn本星で処刑人をしており、 反抗的なNarn人を皆殺しにしていた。 彼女も父親についてその虐殺を見ており、 このNarn人兄弟は、皆殺しになった村から逃げ出した生き残りで、 自分に復讐しようとしているのだと説明する。

自室に戻ったSheridanを怪我を心配したDelennが見舞いに来る。 彼女はあまり無茶をしないように彼を諌め、 彼の制止を押し切って怪我の手当てをする。 Virの婚約の話をするうちに、 二人はキスを交わす寸前まで行くが、 そのときIvanovaから再び呼び出された。
やがてLondoの部屋に押しかけて関係者を集めたIvanovaが、 VirがCentauri本星に送った二千人のNarn人は全て殺されていると 糾弾すると、 それを聞いたLondoは、やっと一人前になったなとVirを賞賛し、 相手はNarn人だからいくら死のうとかまわないと豪語した。 それを聞いたVirは、 Narn人たちが死んでいるのは書類上だけで、 実際にはNarnの女子供を地下ルートで 国外の安全な場所に逃がしている事を告白し、 それをした事を全く後悔していないと言う。 それを聞いたLondoは彼を叱責し、彼の行為を公にはしないものの、 Minbari大使の職を解任しての副官職への復帰を決めた。

今回の「失態」で、VirとLyndistyとの結婚は無期延期になったが、 Babylon5を去る彼女は、Virをいつまでも愛して待ち続ける、という。 しかしVirは、彼女のNarn人への考え方が変る事を望んでいた。
IvanovaはVirがでっち上げたAbrahamo Lincolniの名義が そのまま残っているのを利用し、 地下組織の運営を引き継いで、Narn人の脱出を可能な限り 今後も支援する事を決めた。 彼女は、これまで基地の日常業務に追われて 人間らしい仕事が出来なかったが、 これでやっと意味のある仕事が見つかったとSheridanに言う。


印象に残ったシーン、台詞

「鍵の掛かった部屋一杯の怒ったNarn人より恐ろしいものは何だ?」
「鍵を持った一人のNarn人だ。」
-- 宮廷大臣がVirに教えた新しいジョーク。


Memo

Virが王宮で玉座に触ってみたのは、 何時の日か自分がここに座るというLady Morellaの予言を思い出しての 行動だろう。

IvanovaはSheridanに悪夢の話をする中で、 「自分が誰か解らないのは困ります」と言っていたが、 この「自分が誰か解らない」という言葉は、 他の場面でも時々彼女が口にしている。

保守班との会話で、Londoは足が八本ある虫は皆大嫌いだ、と言っている。 Shadowが正にそのような姿をしている事を考えると、 もしやこれはShadowに実際に出会う前から、 彼が彼らを潜在的に恐れていた事の現われかもしれない。

IvanovaとVirとの会話の中で、 Centauriの男性には六本の触手があってそれぞれが別々の快楽に関係しているというシーンが ある。


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