Babylon5 #101

#101 The Corps is Mother, The Corps is Father

粗筋

地球のPsi Corps本部で、BesterはP12捜査局の局長のオフィスに入ってきた。 彼を待っていた局長は、二人の研修生LaurenとChenを彼に紹介する。 二人は今後数週間の間、彼の指導を受ける事になっており、 尊敬するヒーローとしてBesterを迎える。 緊張を隠せない様子のChenにBesterはジョークで答え、 局長に提出するBabylon5関係の報告書の内容について尋ねられると、 「Babylon5の連中は自分が宇宙の中心だと思っている」と皮肉った。

同じ頃別の一室では、椅子に座った若い男が 「俺の心だ、お前のじゃない!」と独り言を言いながら 机の上の書類をかき回していた。 彼はBabylon5行きのチケットを握り締め、部屋を出て行く。 床には血まみれの男の死体が横たわっていた。

Besterは二人の研修生を、Psi Copのスキャン-対抗トレーニング区画に案内した。 部屋の中では二人のテレパスが机を挟んで座り、互いを見詰め合っており、 Besterたちが入ってきたのに気付く様子もなかった。 実は二人の一方が激しくテレパシースキャン攻撃し、 他方が防戦しているのだった。 Besterは研修生に、現場に出てP12捜査官として働くには このような訓練に最低一時間は耐えられなければいけないと説明する。 Psi Corpsからの脱走者は自分たち捜査官を憎み、 可能なら殺そうともするだろうが、それでも同じテレパスなのだから 連れ戻し保護しなくてはいけないと話すBesterに、 彼らは感謝しないとChenは指摘するが、 それは違う、面白いものを見せようとBesterは答えて、 二人を映像ルームに連れて行った。 そこで彼らはPsi Corpsに連れ戻された脱走テレパスが、 正常なテレパスに戻って逃走中の惨めな境遇を語る映画を見始めるが、 途中で別のPsi Copが入ってきてBesterに耳打ちした。 それを聞いた彼は問題が起こったと言って、二人を連れて別の部屋に向かう。
床に転がった死体の周りにPsi Copたちが集まっている所に、Besterらが入って来た。 局長は被害者はBesterの教え子で、鈍器のようなもので殴られて殺されており、 訓練中で情緒不安定だった容疑者のルームメイトが逃走中である事を話し、 彼にこの件の捜査を命じる。

その夜、Besterの部屋に研修生のLaurenが訪ねて来た。 彼女は初めて死体を間近で見て気分が優れない、 あなたは死体を見るのを慣れているのかと尋ねる彼女に、 普通人はお互いを殺しあうからどうでもよいが 自分たちテレパスの命は貴重で、特に将来ある者の死に慣れる事はないと彼は答えた。 さらに家族について尋ねられた彼は、 両親は自分が生まれて直ぐ事故死し、 施設でDNA検査を受けてテレパスだと判って入ったPsi Corpsが テレパスたちは普通人と異なるのだから固く団結しなくてはいけないと教えてくれた事、 妻は火星に居てほとんど会う事がないと彼女に話した。 そしてLaurenを部屋に返そうとすると、 彼女は今夜はここに居させて欲しいと言って彼を誘惑した。 それに対しBesterは、自分には今は離れ離れだが心から愛する人が別に居ると答えるが、 別に今夜の事を気まずく思う必要はない、二人の間には何も無かったのだからと 優しく彼女を諭す。 やっと彼女が出て行った直後にドアが再びノックされ、 今度は局長が入ってくる。 彼はBesterに、容疑者がBabylon5行きの輸送船の席を予約していた事を告げた。

次の日の会議で、局長は捜査員に事件の容疑者Harrisに関するデータを説明していた。 HarrisのレベルはP10とかなり高く、特殊な訓練の最中だったが、 犯行の動機は判っていない。 偽装工作かもしれないがBabylon5に向かった形跡があるため、 Besterのチームもそこに向かう事になった。 Chenは輸送船に連絡して警備員に捕えさせてはと言うが、 普通人の警備員では手におえないし、Psi Corpsへの干渉を避けるため 普通人の注意を引かないようにしなくてはと局長は答えた。 さらにBesterも、これは自分たちテレパス内部の問題で、 内部で解決しなくてはいけないと付け加える。 会議の後、局長は残ったBesterに、Harrisはいわゆるmind-shredderの訓練を受けており、 強力なテレパスをも破滅させうる力を持つと警告した。

Babylon5への出発を待ちながら、Besterは部屋でHarrisの写真を暫く凝視し、 それから鏡の前に立って手を当てた。 するとその中にHirrisが現われる。 Harrisは「なぜあんな事をしたんだ」と問い、 それに「それが出来たからだ。 何かがおかしいとは判っていたが、確実な事は解らなかった。 そして永遠に解らないだろう。」と自分で答えるのを Besterは厳しい表情で眺めていた。 そこでChenがドアをノックし、出発の準備が出来た事をBesterに告げた。
そのころBabylon5のカジノにHarrisが現われ、ゲームに加わった。 暫くして彼はかなりの金を稼ぎ、テーブルを後にする。 その様子を別の男が少し離れた席で窺っていた。

Besterと二人の研修生が乗ったPsi Corpsのシャトルは、 亜空間内の母船から発進した。 BesterはChenの問に答えて、 このような母船はシャトルを中継するために他にも何隻も存在し、 亜空間に留まって普通人に存在を悟られぬように隠れていると説明する。 シャトルはジャンプゲートから出て、Babylon5に近づいて行った。

入港ゲートで彼らを迎えたZackは露骨に反感を見せるが、 Besterは自分たちが殺人犯を追っていると渡航目的を説明する。 被害者が別のPsi Copだと聞いたZackは、「別に何も問題がない」と厭味を言う。 それに対しBesterは、Laurenに向かって意味深なジェスチャーを見せ、 心を読まれたのではとZackを混乱させた。 「彼は一晩中何を知られたのか悩むだろう」と笑うChenに、 「だから普通人との戦いはいずれ戦いではなくなる」とBesterは言う。
Harrisは通路でカジノで金を巻き上げられた男に捉まり、 イカサマをしたな、金を返せと突き飛ばされた。 Harrisは「ここに来たのが間違いだった、彼を怒らせた」と言い出し、男をにらみつけた。 突然男は動けなくなり目が飛び出そうな表情に変わって悲鳴を上げたがそのまま床に倒れた。 その様子を、先ほどの男が物陰から窺っていた。

BesterはDraziの故買屋からHarrisらしい男の居場所を引き出し、 警備班にその部屋のドアを開けるための協力を求めに行った。 手柄をはやるChenはLaurenの反対を押し切って、 Besterを待たずに部屋のドアをこじ開けて中に入るが、 そこには死体が転がっていた。

Zackは死体が死後二日経っている事を認めながらも、 Besterが到着して直ぐにまた死体が出た事を皮肉った。 死んでいたのはイカサマ賭博師で、死んだ後にもIDが使われた形跡があったため、 HarrisがIDを奪ってカジノで使用した事が推測された。 Zackは部下から新たな死体が出た報告を受け、Besterにさらにいやみを言う。

医療ラボで新たな死体を検死したFranklinは、 脳細胞の半分が破裂しているが外傷はなく、被害者は内部から殺された、 彼らが追っている容疑者の仕業に間違いないとBesterに説明した。 Besterはそのような事はP12のテレパスにしか出来ない、 容疑者はP10だと答えるが、 医療室を出た後で二人の研修生に、事態が予想以上に深刻だと話した。 そしてLaurenに、本部に連絡してharrisの部屋にあった書類を 全て送ってもらうように命じる。 一方でChenには、 基地内のカジノを巡回してHarrisを見つけ、 居場所が判ったら手を出さずに自分を呼ぶように厳重に命じた。

ChenはカジノでHarrisを見つけ、 BabCom回線でBesterに連絡を取ろうとしたが、 途中でHarrisに目を付けていた男に心臓を一突きされた。
Chenの死についてZackからお悔やみを言われたBesterは うわべだけの悔やみなどいただけないとやり返す。 Chenが殺されたときの映像が残っており、刺青の入った犯人の手が写っていた。 その刺青を手がかりにして捜査中だと、Zackは説明した。
その男は隠れ家でHarrisの儲けた金を数え、 二人が協力すれば大もうけ出来るとHarrisに言った。 しかしHarrisは、ここから逃げるだけの金があれば十分だと言い、 何故逃げているのかという問にも、「分らない」としか答えなかった。

BesterはLaurenと、Harrisが部屋に残した書類をチェックしていたが、 そこには幾つもの名前や筆跡が混じっていた。 さらにHarrisが事件を起こす直前の被害者との時間外訓練の記録映像を見て、 BesterはHarrisが多重人格者である事に気がつく。 Harrisの別人格はP12で、情緒不安定なテレパスは監禁されるため、 それを知った被害者は殺されたのだった。 BesterはLaurenに、Harrisが別人格の名前で部屋を借りていないか調べるように命じた。

Harrisとパートナーは別のカジノに向かう途中で Zack率いる警備班に遮られ銃撃戦になった。 横から現われたBesterはHarrisに自分たちと戻るように呼びかけ、 二人に肉薄してPPGで負傷する。 しかしその間に二人は警備班に拘束されたが、BesterはHarrisを傷つけないように求めた。

医療室でFranklinの治療を受けたBesterは、 傷が治るまで暫く留まるように言うFranklinに 本当は直ぐに追い出したいのだろうと皮肉った。 Franklinは個人的感情ではそうだが医師としては別だと答え、 さらに皮肉を続けるBesterに 「普通人とテレパスとは憎みあい続けるしかないのか」と尋ねる。 しかしBesterは、「それは甘いな」と答えた。 Laurenが入ってきて、 二人の容疑者の身柄をPsi Corpsに引き渡すという要請が認められ、 護送するシャトルの準備が出来たと報告する。

亜空間に入ったシャトルの中で、 Laurenは帰ったら背中を揉んであげたい、あなたは死んだChenのヒーローだった とBesterに言う。 そして鎮静剤を打たれて後ろの席に拘束されている二人を見て、 普通人の処置を自分にやらせてくださいと頼んだ。 やがてシャトルから宇宙服のない男が放りだされ、亜空間に消えた。 BesterはLaurenに、君はPsi Copの仕事が合っているかもと声を掛けた。


印象に残ったシーン、台詞

この話は全編「Psi Corpsの視点で見たBabylon5」が描かれており、 Besterが正義の主人公として話が展開して行く。 彼はテレパス特に仲間のPsi Copに対してはとても気さくで親切な人物であり、 部下にとっては頼りになる理想的な上司として描かれている。 それと、普通人に対する無関心(敵意とすら言えない)で冷酷な態度とのギャップがものすごい。 これはLaurenも同様で、純粋な若い女性として描かれている彼女が なんの躊躇いも無く普通人を殺すのは恐ろしい。
今回はオープニングでの一連の映像も通常と少し異なり、 Babylon5のロゴの替わりにPsi Corpのロゴが現われ、 そこには"Trust the Corps"と書かれている。


Memo

今回はレギュラーメンバーは実にFranklinとZackの二人しか登場しない。 BesterはLochleyも現われなかったのをやや意外がったが、 Byronの事件で彼女ももはやBesterを許せないと思っているのだろう。

Besterが言った「心から愛する人」とはLaurenが勘違いしたように妻の事ではなく、 今だBabylon5で人工冬眠中のCalorynである。

亜空間に隠れているPsi Corps母船は、Asimov級輸送船を改造したものである。 Besterの説明や局長の話からすると、 Psi Copはいずれ普通人との全面戦争が起こるのを予期してそれに備え、 勝利を確信しているらしい。

ZackとFranklinのテレパスに対する考え方はある意味対照的である。 Byronの事件を直接担当したZackは、テレパス特にPsi Copは決して許せないと思っている。 一方Franklinはあくまで理想主義者で、共存が可能だと信じている。

このエピソードの監督はStephen Furst(Virを演じている俳優)である。 彼の監督したエピソードは他に"The Illusion of Truth"と "The Deconstruction of Falling Stars"であり、 三作ともBabylon5を他者の視点から眺めるという構成になっている。

このエピソードの主人公はBesterだが、それを見る視点はLaurenのものである。 すなわち、Laurenから見たBesterやZackが描写されている。 その視点ではBesterは同胞愛に燃えた理想的な上司であり、 Zackは偏見を持ってその彼に不当な言いがかりをつける間抜けな一般人である。


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