Babylon5 #109

#109 Objects at Rest

粗筋

夜明け前の司令室にSheridan大統領が入ってきて、 同じく眠れずにここに居たLochleyに声をかけた。 彼女が赴任してもう直ぐ一年になるとは何と時間が経つのが速いものかと言う彼に、 彼女は自分を司令官に選んでくれた礼を述べた。 もう直ぐDelennと共に 惑星間同盟の本部が完成したMinbariへと向かう彼は、 基地を去る際に儀式抜きで静かに出発したいと希望し、 彼女もそれを約束する。 開港に備えて朝食を取りに出て行こうとする彼女を彼は呼び止め、 彼女の仕事振りに対して礼を言った。

基地に戻ってきたTa'LonがG'Karの部屋の前で彼の名を呼んでいると、 通りかかったVirが彼は数日前に行く先を告げずに旅立ち、もう戻っては来ないと教えた。 G'Karに呼ばれてここに来た、なにか伝言を受け取っていないかと尋ねたTa'Lonは、 ドアを開けて中に入る。 すると彼の声紋を確認したコンピューターが、G'Karのメッセージの再生を始める。 その中でG'Karは自分が去った後任のNarn大使としてTa'Lonを指名し、 その理由として、Narnが惑星間同盟との絆を強め国家を再建するためには 指導者が忍耐、方向性、決断力と強さを示す事が必要であり、 自分は前の二つを示したが後の二つを示すのは戦士である彼がふさわしい事を挙げる。 そしてこのメッセージは後でSheridanらにも送られるが、 今の彼は自分がここに赴任した頃と大差なく、 皆は彼を暖かく受け入れてくれるだろうと続け、 彼にNarn本星とBabylon5の両方でNarn国民に仕えて導くように言った。

レストランで食事をしながら、 FranklinはDr. Hobbsに彼女を自分の後任の医療部長に指名したと話していた。 自分より他にふさわしい人材が居ると謙遜する彼女に、 ここの医療部長には専門家ではなく全てを総括でき強い信念を持っている 彼女のような人物が適任であると彼は指名の理由を説明する。 それを聞いて顔を綻ばせて礼を言った彼女は、彼の出発の予定を尋ねた。 彼が今夜発つと聞いて、彼女はやや驚いて妊娠中のDelennのケアについて尋ねるが、 自分に出来る事は全てやったし、後はMinbariの医師に任せると彼は答えた。 そのときSheridanがレストランに入ってきたのを見て、 Franklinは別れの挨拶のために席を離れた。

Delennが出発のために部屋で荷物をまとめている所に入ってきたのは、 彼女らをMinbariに送るためにRangerの訓練の途中で休暇を取って やってきたLennierだった。 彼女は彼を見て喜んで故郷の話を聞きたがり、 彼のためにお茶を入れようとキッチンに行く。 その間Lennierは、部屋にあったJohnとDelennが一緒に写った写真を手に取って じっと見つめていた。

Sheridanのオフィスでは、Tessaが彼とLochley, Zackに DraziとBrakiliの宙域境でのトラブルについて報告していた。 売春宿への立ち寄りが原因だという彼女の報告に、聞いていたZackは苦笑する。 Sheridanはさらに続けようとする彼女を制して下がらせ、 実に詳細な報告でこの仕事にぴったりだと感想を述べる。 TessaをMinbariではなくBabylon5に留める事に驚きを示すLochleyに、 Babylon5には全ての情報が集まり、 Minbariよりも情報網を構築しやすいと彼は説明した。

火星のEdgars Industryの会議室に入ってきたGaribaldiは、 その場に集められた数名の従業員に 今日から日常業務を任せれる事になったと自己紹介した。 なぜ自分たちを呼んだのかと尋ねる男に、 彼らは職場のトラブルメーカーで上司に楯突き出世コースから外れていると彼は答える。 そして彼らを首にするのではなく逆に取締役に据えて、 自分を含めあらゆる部門の問題点を指摘するように求めた。

地球行きの定期便への搭乗案内が流れ、 Franklinはたった一人で船に向かった。 途中で彼は立ち止まり、感慨深げにあたりを見回してから再び歩き出す。

ISNのレポーターは、 Babylon5に向かう一隻のWhiteStarの映像を写し、 この船で間もなくSheridan大統領夫妻がMinbariに向かうという スクープを伝えていた。 部屋でそれを観ながら、 JohnはDelennに向かって腹立たしそうにレポーターのでしゃばりを罵り、 静かにここを去るという計画がおじゃんになったと嘆いていた。 やがてLennierが迎えに現われ、 Delennが忘れ物がないか確認しに奥に入っている間に、 JohnとLennireとはお互いにぎこちない会話を交した。 三人が出発ゲートに向かうために移動チューブを出たZocaloには ISNで彼らの出発を知った群集が広場に集まっており、 彼らを迎えたLochleyが申し訳なさそうに詫びながら、 何か一言話すようにSheridanに求める。 群集の真中に進んだ彼は、しばらく躊躇ってDelennにその役目を譲った。
「初めてBabylon5に赴任したとき、 さまざまな言語を学びました。 Drazi, Brakili, Centauri, そして商用語である地球の言語です。 言葉によっては、すんなり頭に入らないものもありました。 最も難しく感じた言葉は「さよなら」です。 Minbariには「さよなら」に当たる言葉が存在せず、 別れの言葉には再会の可能性が込められています。 他の場所で、他の時代で、生まれ変わって。 ですから、さよならを言わなくても許してください。 魂はこれからもここに居て、未来の創生を願っています。 そして再びこの道を歩みます。」
彼女はこう述べて再び歩みだし、 群集は三人に道を開けた。
出発ベイに入った所にZackが待っており、三人に別れの挨拶をする。 古株が一人でも残っていて心強いと彼に言うSheridanに、 たぶん基地が最後を迎えるときまで自分はここに居るでしょうとZackは答えた。 三人がMinbari Flyerへ向かう後姿を、 Zackと後から現われたLochleyが見送った。
やがてFlyerはWhiteStarに向かい、三人はWhiteStarのブリッジに入った。 Delennに艦長の不在について尋ねられたLennierは、 艦長はBabylon5に残っており、替わりに二人が象徴的にMinbariまで艦を指揮して行く事を 進言する。 Sheridanも同意し、艦を基地の司令室に正対させるように命じる。 その司令室には、これからも基地に留まる Corwin, Tessa, Vir, Lochley, Zack, Ta'LonとHobbsが並び、 前に進み出たLochleyが敬礼すると WhiteStarのSheridanも敬礼を返した。 そしてWhiteStarは向きを変え、ジャンプゲートへと入った。

亜空間をMinbariに向かって飛ぶWhiteStarの中で、 書類に目を通しているDelennを船室に残してSheridanは散歩に出た。 突然避難警報が鳴り響き、乗員たちが通路を走って避難を始める中、 Sheridanは逆の方向へ向かう。 現場では有毒な冷却剤のガスが漏れており、それを止めようとした 地球人のRangerが倒れていた。 彼はそのRangerを抱えて一緒に避難しようとするが、 ガスを遮断するために透明な気密扉が閉まってしまう。 ちょうど向こう側に現われたLennierに、 パネルを操作して扉を開けるようにSheridanは叫ぶが、 彼は躊躇い、あたりを見回して他に誰も居ないのを知ると、そのまま走り去った。 唖然としたSheridanは気を取り直して倒れているRangerの護身棒を使って 気密扉を破ろうとする。 一方Lennierは、途中で自問自答して「出来ない!」と叫び、 気密扉の所に一旦戻ってきた。 しかしそのとき既にSheridanは扉を破って外に脱出しており、 他の乗員たちも駆けつけて来て、 SheridanとLennierは黙ってお互いを見詰め合う。 さらに後ろから現われたDelennが立ち尽くすLennierに何が起こったのか尋ね、 様子がおかしいと気付いて再度声を荒げて詰問すると、 彼は何も答えずに走り去った。 やがて彼の乗ったNial級戦闘機がWhiteStarを離れる。 Delennは彼を呼び出そうとするが、応答は無かった。

部屋に戻ったDelennは、TuzanorにあるRangerの訓練施設のLennierの私室から 日記が見つかったとJohnに話していた。 その記述は彼が彼女に特別な感情を抱いていたのを示しており、 彼女とJohnとの結婚は間違いだと書かれていた。 彼女も彼の感情をある程度察していたが、 ここまで強いものだとは思っていなかったと彼女は言う。 人には思いもかけずに別人になってしまう瞬間があり、 その一瞬のために一生悔やみ恥じ続ける、 彼はあの一瞬、本能に負けてしまったのだと彼女は続け、 自分があの場にやって来たときに彼は過ちを正そうと戻って来たのかもしれないと言うが、 そうではなく、自分の死を確認しに来たのかもとJohnは答える。 そして、もし彼が過ちを正すために戻ってきたと言ったら損じてくれるかと彼女が尋ねると、 判らない、信じるかもしれないがそれは正しくない、 真実は誰にも判らないし彼は一線を超えてしまったのだから 代償を払わなくてはいけないとJohnは答えた。
彼女は出発を暫く遅らせて休むように言うが、 Minbariの人々は二人の到着を待ちわびており、 少しでも遅れれば噂が広まりかねないと言って彼は予定通りにMinbari本星に向かう事にした。 さらに自分がMinbari人に殺されかけたという話が公になれば 同盟の門出にケチが付くため、 Lennierの一件は二人だけの秘密にする、 そうすればLennier自身も一息つけるだろうと彼は言い、 それを聞いたDelennは彼を抱きしめた。

花火が何発も打ち上げられて歓迎される中、 二人のWhiteStarはMinbari本星に到着した。 同盟新本部の近くに着陸したWhiteStarから降り立った二人は、 手を取り合って水晶の巨大なモニュメントが立ち並ぶ広場を進み、 二人のMinbari人に迎えられる。 本部の建物に入ったSheridanは、驚きの表情を見せて立ち止まった。 そこは眼下に街を見下ろすバルコニーになっていた。 その景色を眺めている彼の後ろから、 「相変わらず大きな空想に耽っているのか?」というLondoの声がした。 Londoは彼らの到着を祝うために、Centauri本星からここを訪問していたのだった。

その夜JohnとDelennとは、Londoを交えてディナーを取っていた。 Londoは前回会ったときとはうって変わって陽気で、 Centauri本星で彼が二人と同盟に対して酷い事を言ったとDelennが咎めると、 あれは打ちひしがれた民衆を鼓舞するためのリップサービスだと彼は言い訳をした。 そしてDelennの懐妊とMinbariへの帰還に対して乾杯しようと言い、 酒は無いのかと尋ねるが、 Minbari人にとってアルコールは有害なので酒は全てBabylon5に置いてきたとSheridanは答え、 逆にLondoが酒を持ってこなかったのを不思議がった。 それに対しLondoは、自分の仲間が酒を飲む事を許さないのだと答えるが、 そのやりとりの最中にDelennは何か異常な感覚を憶える。 彼女がLondoをもう一度見ると、彼の右肩にKeeperの透明な像が見え、 それも彼女を見返す。
Delennの様子が変なのを見たLondoは彼女に声をかけ、 彼らの子供に贈り物があると言い出した。 彼がもって来させたのは大きな古い銀の壷で、 これはCentauri皇帝家の伝統で自分の後継者に贈るものだという彼に、 美しい品物だが受け取れないとDelennは答えるが、 自分の死後は議会が皇帝の地位を廃するだろうから 自分には無用なものだとLondoは答えた。 そこでMinbari人の従者が現われてDelennに何か耳打ちし、 彼女はちょっと用があると言って部屋を出て行った。
残ったSheridanがLondoに礼を言うと、 彼はこの壷を子供が16歳になったときに与えるように求めた。 壷の底が封印されているのを見たSheridanが、中に何が入っているのか尋ねると、 2000年前に最初の王宮の近くを流れていた河の水だとLondoは答えた。
一方DelennはLennierからの通信を受けていた。 彼は船内で起こった出来事を彼女に詫び、 許してもらおうとは思わない、自分でも自分を許せないが 自分は大統領を傷つけるつもりは無かった、それだけは解って欲しいと言った。 そして大統領にも自分の謝罪を伝えてくれるように頼んだ。 彼女は彼に戻ってくるように懇願するが、 彼はこれから遠くに行って自分が何者なのかをもう一度考える、 そして何時か彼女の前に戻って自分の罪を購いたいと言い、 通信は終わった。

LondoはSheridan夫妻との別れ際に、 この先何が起ころうと自分はこれからも彼ら二人の友人だと理解して欲しい、 二人と一緒に過ごしたこの日は二人が思う以上に自分にとって意味深いと言い残した。 彼が去った後、JohnはDelennに先ほど彼女が中座したのはLennierからの通信だろうが、 彼は何と言っていたのかと尋ねる。 彼女は答えをはぐらかし、「大丈夫か」と心配するJohnに 生まれて初めて大丈夫ではないと思った、と答えて二人は抱き合う。
彼がCentauriの戦艦に戻り、眼下の惑星を見つめていると、 「良くやった、褒美として一時間だけ自由にしてやろう。」 というDrakhのささやき声が聞こえる。 この後はどうなるのだ、というLondoの心の中の問に、 年月が過ぎるのを待つだけだ、我々は辛抱強いのだとDrakhは答える。
JohnとDelennの居間に置かれた贈り物の壷の中では、Keeperが眠っていた。

深夜にJohnはDelennと眠っていたベッドから起き上がり、 隣の部屋でメッセージを記録し始めた。 それは未だ生まれぬDelennとの子供が21歳で成人したときへ宛てたもので、 Lorienの話が本当ならばその前に自分はこの世を去っており、 君の独り立ちした姿を見る事ができないが、 自分が生きている限り君を愛しつづけるだろうと言ってから、 さらに次のような忠告を贈った。
Delennは君の持てる最大の支えであり、彼女の知恵と情熱は計り知れない、 どんな時であろうと彼女は君を愛し続けるだろう。 時には君は大きな過ちを犯すかもしれないが、 そこから学ぶ事が出来れば良い、 時には孤独で故郷から遠く離れているように感じるかも知れないが、 故郷は直ぐそこにある、 友人を失い、新たな友を得る事もあり、それは痛みを伴うだろうが必要な事だ、 人生は変わってゆくものだから、君も変わってゆくだろう、 一人一人の歩む道は異なっており、自分の道を歩み自分が誰かを憶えていれば良い。
彼がここまで記録したとき、Delennが起きてきて明かりを点けた。
彼はさらに、自分たちが信じて歩んできた道は平坦ではなく、 多くの困難と痛みを伴うものだったが、 君も自分の信じる道を進め、君に同意する者が多かろうと少なかろうと関係ないと続ける。 そして「戦いを始めるな、しかし必ず終わらせろ。」という自分の父親の言葉を 引用するが、その言葉の後半は入ってきたDelennが先に言った。 彼女が彼にもう眠るように忠告すると、 明日の朝は思い切り寝坊しようと彼は答えた。 そして彼女に、どれくらい愛しているか言った事があったかと尋ねる。 彼女はもちろん言ったが、好きなだけ繰り返しても良いのよ、と答え、 二人はキスを交した。


印象に残ったシーン、台詞

Lochley: 時間は何処に行ったんでしょう ?
Sheridan: 彼方だ。
Lochley: そこに何があるんです ?
Sheridan: 辺境だ。
Lochley: その向こうには ?
Sheridan: 真実がある。
二人きりの司令室で、外の宇宙を眺めながらのLochleyとSheridanとのやり取り。 Sheridanのやや禅問答的な答えは、恐らく彼自身が予感している 命の尽きる日の出来事に関係があると思われる。

When I was first assigned to Babylon 5, I had to learn to speak several languages: Drazi, Brakiri, Centauri, and, of course, English -- the human language of commerce. Some words have always come easier to me than the others. One of the most difficult words for me was "good bye". There is no corresponding word for good bye in Minbari. All our partings contain within them the possibility of meeting again in other places, in other times, in other lives. So, you will excuse me if I do not say good bye. Our souls are a part of this place, our hopes the foundation of our future... And we will pass this way again.
見送りに集まった群衆への、Delennの別れの挨拶。


Memo

LennierがRangerを裏切るというMordenの予言 は、最後の最後になって実現してしまった。 ただ、最初の冷却剤漏れそのものは単なる事故で、 まさか彼の工作ではないだろう。

DelennはLennierを庇いながら、 嘗て自分が地球との戦争開始時に犯した過ちを 思い返していたのでは。 あのとき彼女は怒りの感情にとらわれて判断ミスを犯し、 その後その過ちが招いた結果を長い年月をかけて償い続ける事になった。

Lennierの今回の過ちを知った上で、もう一度 #43 "Comes the Inquisitor"での 「正しい行いも、理由が誤っていれば混乱を招き、 破滅的な結果をもたらすでしょう。」という彼の言葉を思い出すと、 運命の皮肉を感じる。 LennierがRangerに志願した理由は、 実はMarcusと同様に個人的な問題であり、 「正しい理由」ではなかった。

今回のLondoの言動を見ていると、実は何とかして二人に警告しようとしているように思われる。 彼は酒をしきりに要求したのは、 Keeperを短時間でも眠らせる事が出来ると 知っていたからだろう。

Londoは自分の死後皇帝の地位が廃止されるだろうと言っていたが、 彼はLady Morellaの予言のうち、 (自分の死後)Virが皇帝になる という部分は信じていないのだろうか?

やがて生まれてくる二人の息子Davidが、Keeperの影響を逃れられるかは 今の所不明である。 "The Deconstruction of Falling Stars"の100年後の討論会で、 「二人の息子が起こした事件」 という言葉が出てくるので、 それとKeeperとが何らかの関係があるのだろうか。

J&Dの息子Davidを含む重要人物の運命に関する未来の年次が、 微妙にずれながら20年後付近に集中している。
Sheridanが迷い込んだ未来で見たLondoとG'Karの死は、16年後。(2278年)
Keeperの入った壷がDavidに渡されるのが、彼が16歳の時。(16--17年後)
Lorienの予言でJohnの寿命が尽きる時は、19年後。(2281年)
JohnがDavidに残したメッセージは、彼の21歳の誕生日宛て。(21--22年後)


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