Babylon5 #89

#89 No Compromises

粗筋

Babylon5のジャンプゲートから地球同盟のOmega級駆逐戦艦Acheronが現われ、 そこからのシャトルがドッキングベイに入港した。 降り立ったのはBabylon5の新司令官Elizabeth Lochley大佐で、 迎えに出たCorwin中尉に他の指令スタッフの所在を尋ねる。 基地の混乱状態を見て、運営が拙いのではと疑問を呈する彼女に、 Corwinは、ここでは他と少し違い、求めなくてもトラブルがやってくると答えた。

火星では、痛めつけられた地球人Rangerが椅子に座らされていた。 オルゴールを持った男が彼に、言い残す事は無いかと尋ねると、 Rangerは「その人のために生き、その人のために死ぬ」とのみ答える。 男はRangerをPPGの一撃で撃ち殺し、死体の首に 「Babylon5への速達便」と書いたプラカードを下げた。

John Sheridanの居間で、起きてきたJohnがコーヒーを飲んでいる所に 寝室からDelennが出てきた。 彼女はGaimの新大使との面会があるため、自分の部屋に戻って着替えなくてはと言う。 さらにシャワー室にかけられた靴下について なぜ自分の手で洗うのかと尋ねる彼女に、 軍に入隊した時の鬼軍曹から 自分の仕事を常に残しておくのが戦死しないこつだと教わったとJohnは答えた。
彼は彼女との完全な同居を望んでいたが、 二人がそれぞれの仕事をこなすには片方ずつの部屋は狭いため、 Minbariに恒久的な施設が出来るまではBabylon5で今まで通りの暮らしを続ける事で 二人が合意した。
その頃基地の外では、Rangerの死体の入ったポッドがゆっくりと回転しながら浮かんでいた。

Sheridanはオフィスに入ってきたLochleyに、彼女が基地司令官に就任したという 地球からの通達を公式に伝えた。 Babylon5は惑星間同盟が早晩買い取って正式に地球から独立する予定なのに、 なぜ地球人を司令官に据えるのかと尋ねる彼女に、 伝統であり、また地球内戦の傷跡を癒して自分たちの出自を忘れないためだと彼は答えた。 そして彼女には柔軟性があり交渉に長けているが、 必用なときには武力行使も辞さない人物なので司令官として選んだと告げる。 地位に見合った権限が欲しい、自分はSheridanのお飾りになるつもりはないと言うLochleyに、 外交政策は自分の権限だが、それ以外の通常業務は彼女の権限だとSheridanは答えた。
Corwinからの呼び出しでオフィスを去る前に、 彼女はSheridanに自分が地球内戦でどちらの側に付いたかを尋ねないのかと言ったが、 彼はもちろん尋ねないと受け流した。
オフィスを出たLochleyを、背の高い金髪の男が陰から見つめていた。

ZackはSheridan大統領の就任式の警備を任されていたが、 Garibaldiはそれに満足せずに盛んに警備体制について口を出していた。 議論しながらZocaloを通り過ぎる二人の様子を、火星から来た暗殺者が見守っていた。
CorwinがLochleyに基地の外で見つかったRangerの死体とプラカードを示している頃、 Sheridanの部屋のモニターに、暗殺予告文が送られてきていた。

昼食を取っているLochleyを、先ほどの金髪の男が見守っていた。 突然彼女の周りの音が消え、近づいてきた男はByronと名乗った。 彼は彼女に2時間後にBrown3区に来るように求め、 彼女が辺りを見回したわずかな時間の間に姿を消した。

G'Karが自室で書き物をしている所に、Sheridanが訪ねて来た。 G'Karは彼が自分の本を借りに来たのだと思って警戒したが、 彼は就任式での宣誓文と同盟の「原則の宣言」の原稿を依頼しに来たのだった。 始めは荷が重過ぎると言って固辞したG'Karだが、 彼にしか出来ない仕事だとSheridanに言われて感激し、 全ての力をその仕事に注ごうと答える。

Rangerの遺体を検死したFranklinは、熟練した殺し屋による犯行だが 基地外に投棄されたのは数時間前であり、 殺し屋が基地に潜入していると結論した。
その報告を受けてからBrown3区に向かったLochleyの前に、 Byronが仲間を連れて現われた。 用心のために警備班を連れてきていたLochleyだが、 彼らが武器を持っていないのを知って警備を下がらせた。 Byronは自分たちは未登録テレパスだと説明し、 Babylon5にテレパスのコロニーを作るという自分たちの目的に彼女の理解を求める。 さらにByronは彼女に仲間のテレパスを紹介するが、 その一人の少年Simonは過去の事件で心を閉ざしていて口をきかず、 ただ彼女の心にいくつもの花のイメージを送る。 彼は気に入った相手には花を贈るのだとByronは説明した。 Simonの顔色が悪いのに気づいたLochleyは、Franklinに診察させるように指示した。

Delennは異星人区画の入り口付近で、Gaimの大使からの挨拶を受けていた。 二人が別れて立ち去った後、殺し屋がGaimの大使の跡を追って異星人区画に入った。 彼はGaim大使の部屋に侵入し、スーツのヘルメットを外した彼を射殺して そのスーツを奪った。

部屋に戻ったSheridanは、脅迫メッセージを受け取っていた。 脅迫者はLincolnやRoosevelt, Kiyoshiといった戦争を起こした過去の大統領の名を挙げて、 地球での内戦で多くの死者を出した責任を自らの命で償うように求めていた。

Simonを診察したFranklinは、栄養失調以外には特に肉体的な問題が無い事を確認した。 Byronは昨年彼を火星で拾ったが、自分で口をきかない事を選んでいると説明した時、 Franklinは炎に囲まれ死にかけている若い女性を抱えるSimonのイメージを観た。 女性が誰かは判らないが彼女の死にSimonは責任を感じているらしいとByronは話す。 診察が終わった事を告げようとFranklinが振り向いたときテレパスたちは姿を消しており、 Simonもいつの間にか天井の通気孔の中から部屋の中を覗いていた。

暗殺予告を知ったGaribaldiは緊急会議の場で 警備が万全になるまで大統領就任式の延期を求め、Delennも同調するが、 Sheridanは指導者は警備の陰に隠れるのではなく 人々と同じ場所に立たなくてはいけないと主張する。 Londoは指導者の就任式は新たな暗殺の標的になる儀式に他ならないと言うが、 Sheridanはいずれにせよ標的にされる事には変わりないと言って 就任式を予定通り実施したいとなおも言う。 Lochleyが彼の意見に同調して、予定通りの開催が決まった。
会議の後、GaribaldiはなおもLochleyに食い下がるが、 彼女は逆に民間人である彼は会議の場に居る資格がないと指摘した。 むっとしたGaribaldiは、自分は彼女よりずっと以前からここに居るのだと反論するが、 彼女は相手にしなかった。

オルゴールの音に誘われてSimonが通気孔から覗いた部屋の中では、 暗殺者がGaimの環境スーツをいじって何かをしていた。 Simonは彼の心からSheridan暗殺のシーンを読んで思わずよろめき、音を立ててしまう。 暗殺者はPPGを天井に何発も撃ち込み、 血が滴り落ちて来たのを見て直ぐに荷物をまとめて部屋を出て行った。 重傷を負ったSimonは身体を引きずりながら出口に向かった。

就任式の会場に各国の大使たちが集まり、 G'KarはSheridanに宣誓文を書き上げた事を知らせた。 Gaimのスーツで身を隠した暗殺者が警備をすり抜けて会場に入った頃、 Garibaldiはメッセージの声門から暗殺者が 地球軍の元少佐Clemensだと突き止めて、Zackに知らせた。 そのとき会場にSimonがよろめきながら現われ、警備に止められるのを見て、 Franklinが声をかける。 彼はFranklinの腕の中に崩れ落ち、人々が集まった隙に Clemensはヘルメットを取りPPGを取り出そうとした。 しかし瀕死のSimonが周囲の人々の心にSheridan暗殺のイメージを投影し、 暗殺者の存在に気づいた警備班との撃ちあいの後、Clemensは逃走した。 残念ながら就任式は延期だなと言うG'Karに、 このまま続行するとSheridanは答える。
しかしClemensは飛行中隊員を襲ってStarFuryを発進させ、 それに気づいたGaribaldiも慌てて後を追う。
観測ドームでの宣誓式が始まり、 白い儀式用の服を着たDelennを始めとする大使たちの見守る中で Sheridanの横に立ったG'Karが同盟の原則の宣言を読み上げ始めた。 そのとき窓の外にStarFuryが現われ、Sheridan以外はそこを出るようにとClemensは脅す。 大使たちは慌てて部屋を出てゆくがG'Karは部屋の中に残り、 さらにDelennは前に出てSheridanの横に立った。 Clemensが「自分の人生全てを破壊した」とSheridanを糾弾し、正に発砲しようとした時に、 後ろから現われたGaribaldiのStarFuryがClemensの機を捕捉して司令部に合図した。 ClemensのStarFuryは防御砲の砲火によって破壊され、Sheridanは危機を脱した。
窓の外の光景に顔をこわばらせて立ち尽くす二人にG'Karが近づき、 「大統領になりたいなら、手を置いて誓え!」と宣誓書をSheridanに差し出す。 彼が誓うとG'Karは一言「よろしい」と言って直ぐに出て行き、 それを見たDelennは表情をほころばせた。

Franklinに伴われて大統領の執務室に入ってきたByronに、 SheridanはSimonが自らの命と引き換えに自分を救ってくれたと礼を言った。 Lochleyは既にテレパスのコロニーを作るというByronの要求を拒否していたが、 Sheridanはこれは自分の権限に関する事だと言って決定を覆した。 Byronが立ち去った後「正しい決定ならよいのですが」と言うFranklinに、 「いずれテレパス戦争が起るだろうから、一部でも味方につけておく事は意味がある」と Sheridanは答えた。

地球同盟の記章の取り付けをLochleyがオフィスで見守っている所に Garibaldiが現われた。 彼は惑星間連合の秘密調査部問の責任者に就任したと告げ、 次は会議で会いましょうと彼女に皮肉っぽく言う。 そして去り際に、彼女が嘗てClemensと同じ部署で働いていたと指摘し、 彼女は内戦でどちら側についていたのかと尋ねた。 それに対しLochleyは「皆同じ地球のために戦った」と答えた。


印象に残ったシーン、台詞

惑星間同盟の代表は、多くの種族の声を代弁する。 そのためこの原則の宣言には、 同盟に加盟した全ての種族の聖典の1ページ目が含まれている。 同盟の代弁者は自由に生き、夢を追求し、報復を恐れず、 社会の不正に取り組み、今それぞれの持つ信仰の自由は 全ての生きとし生けるものに与えられた、 これは侵すことの出来ない権利だと理解しなくてはならない。 さらに他の種族が異なる信仰をもつ権利も尊重する。
John J. Sheridan, 君は・・・
Sheridan大統領就任の宣誓式のG'Karによるスピーチ。


Memo

SheridanはByronにテレパスのコロニーをBabylon5に作る事を許可したが、 #88 "The Deconstruction of Falling Stars"での 100年後のシーンで、この事が彼の最大の過ちとTasakiに非難されていた。 ただしこの件と後の「テロ事件」とは、 Tasakiらが言っていた事が真実かは疑問が残る。 Delennは彼らの事を「知らない事は捏造する」と非難していた。

JohnとDelennは結婚後も完全には同居せず、 互いの部屋を行き来する「通い婚」状態らしい。

Gaimの大使はDelennに「女王のご加護を」と別れの挨拶をしたが、 GaribaldiもZackに女王についてGaimに長話をさせないように警告していた。 Gaimは昆虫を思わせる外見の種族で、彼らの社会構造は地球の蟻に似ている。

DelennがGaimの新大使にShadow戦争での彼らの尽力に感謝の意を示したのは、 ある意味皮肉が混じっているかもしれない。 実際この戦争においてGaimは始めBrakiriへの援軍を利己的な理由で 拒んでいたし、 「Z'ha'dumでSheridanが死んだ」と言い切って彼女を 激高させたのもGaimの大使だった。

G'KarはNarnでは偉人扱いされていて、 彼の執筆中の本は未完成であるにも関わらずその一節が多くのNarn人に引用されるほどらしい。 もしやこの本が"G'Quanの書"であるという展開はありえないだろうか?

Narnの習慣では、子供は仮の名前をつけられ、 10才になったときに自分の信仰を選んでその信仰にちなんだ真の名前を与えられる。

Kiyoshi大統領は2212年前後に勃発したShinning Star戦争の当事者で、 内戦終結直後に敵側の兵士に暗殺されている。

「自分を殺しても何の意味もない、同盟は存続する。」というSheridanに、 「そんな事はどうでもいい、ただ自分の人生を狂わせたお前に復讐したいだけだ」 とClemensは答えたが、確かにこの種の動機の相手は説得が効かないから一番手に負えない。 彼の立場から考えれば、長々としゃべらずにさっさと攻撃すれば目的を遂げられたのに・・・。

最後のLochleyとGaribaldiとのやり取りからすると、 彼女は内戦では最後までClark政権に忠誠を誓っていたようだ。 Sheridanはそれを知った上でわざわざ彼女を起用したのだろう。 彼女とGaribaldiとの軋轢は今後も尾を引くかもしれない。

Sheridan大統領の就任式にLennierの姿がなかったのはやや不自然だが、 次回の展開を知るとある程度納得がいく。


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