Babylon5 #90

#90 The Very Long Night of Londo Mollari

粗筋

自分の寝室でJohnと眠っていたDelennは、Minbari本星のRuellからの通信で目を覚ました。 それはLennierの後任の副官の候補リストが出来たという連絡で、 LennierからBabylon5を去るという話を聞いていなかった彼女は驚愕する。 RuellによるとLennierの帰国の知らせはDelennの名前で送られており、 期間は無期限だという。

LondoはCentauriから送られて来た自分の秘蔵の酒であるbrevareが 検疫のために差し押さえられた事に対し、Zackに食って掛かっていた。 Virは彼をなだめようとするが、Londoは絶対にこんな事は許さないと強硬に主張する。 VirがZackに事を穏便に済ますように求めている間に Londoは酒の封を切って一口飲んだが、その直後にその場に倒れた。 Zackは直ぐに医療室に連絡する。 意識のないままLondoは医療室に運ばれ、Franklinらは懸命の治療にあたる。

Delennが落ち着かない様子で部屋を歩き回っている所にLennierが現われて、 今日のスケジュールについて話し始めた。 彼女は彼を遮り、なぜ彼がこの基地を去ることにしたのかを尋ねる。 始め口篭もっていたLennierは、自分はもう彼女に必要とされていないからだと答えた。 そんな事はないというDelennに彼は、 彼女の今の伴侶はSheridanであり自分の存在は余計だと言い、 いつでも自分の傍に居るという誓いを思い出させる彼女に、 お互いのためにも自分がここを去るのがよいのだと説明した。 そして明日の朝ここを発ち、Minbariに戻ってRangerに入るという決意を告げる。 彼女はそれを聴いてさらにショックを受け、 どんなに危険な事か解っているのかと尋ねるが、 彼はMarcusの死によって失った自分の一部を取り返せるかもしれないと言う。 彼女に尊重されるように変わりたいと言うLennierに、 今までも尊敬してきたと彼女は答えるが、 大抵の場合はそうだったが、それだけでは足りない、もっと別の意味で 彼女に必要な存在になりたいと彼は答え、 Rangerの訓練中でもここに戻ってこられるかもしれない、 自分の心の叫びに従いたいと彼女に告げた。

ZocaloでぼんやりとしていたVirをGaribaldiが探しに来た。 先週のSheridan暗殺未遂に引き続いて起った今回の事件に憤るVirに、 これは毒殺ではなく心臓発作だとGaribaldiは説明するが、 左側の心臓だと聞いてVirはさらに表情を曇らせる。
その頃医療室ではFranklinがSheridanにLondoの容態について説明していた。 Centauri人には心臓が二つあり、右は地球人の心臓と同様だが、 左は腎臓のような機能を持っていて手術が困難である。 さらに悪い事に長年のストレスによってLondoの心臓への静脈はぼろぼろになっている。 Centauri本星から人工心臓が届くのは三日後で、 生命維持装置では一日しか持たず、 もし何か起れば手の施し様がないと言う。

その夜遅く、ラボで意識のないまま眠るLondoをDelennが見守っていた。 そこに現われたJohn Sheridanは彼女に、 Londoはこれまでいつもエネルギッシュで、 このような姿を見るのは初めてだと言う。 Londoにはこれまで何度も腹立たしい思いや失笑を覚えてきたし 一度は好意を抱いた事もあったが、 哀れみを覚えたのは初めてだとDelennは答え、 彼が居なくなったら寂しいだろうと言う。 それを聞いたJohnはLennierがここを去るという話を持ち出し、 それは自分が原因だろうかと彼女に尋ねた。 それを肯定する彼女に彼は、 仕方がない、自分にもLennierの存在を受け入れるだけの度量がないと答え、 「三人は仲間割れ」という地球の諺を引用した。 それに対しDelennは、Minbariでは三は神聖な数だと答える。 そしてLennierが自らの心の叫びに従ったのではなく、 単に状況から逃げ出したのかもしれないと言うJohnに、 「宇宙が進むべき道を教えてくれるでしょう」と彼女は答えた。 JohnからLondoが今夜持ちこたえられるかは彼次第だと聞いた彼女は、 「幸運をMollari, 幸運を・・・」と呟いてJohnと共に病室を立ち去った。

Delennの呟きは意識を失ったままのLondoに届いていた。 彼は夢の中でDownbelowの一角に居たが、Delennの声を聞いてその姿を探す。 やがて奥まった小部屋の中に、黒いベールを被って占い師の姿をした彼女に出会った。 彼女は彼に6枚のタロットカードを示し、彼の過去だと言う。 そしてそのカードを片付けてまとめると、その束から血が流れ出した。 彼女は彼は死にかけていると告げ、それを認めた彼に生きたいのかと尋ねる。 始めはこれ以上生きている意味はない、むしろ夢で見た20年後の運命を逃れるために 今死んだ方が良いと言っていた彼だが、 ベールをたくし上げて素顔になった彼女に三度問われて、 最後に「生きたい」と答えた。 すると彼女は再びカードを捲り彼に示すが、その絵は血で汚れて見えなかった。 「生きたいという答えだけでは不満なのか」と問い返すLondoに彼女は、 「それだけでは不十分よ、さらに一言」と告げる。 しかし何を言えば良いのかという彼の問には答えず、黙って彼の後ろを指差した。 それに従って彼が床の格子を開けると、そこには巨大な赤い幕のようなものが脈打っていた。 彼はそれに手を当てて考えるが、「解らない、何を求めているのか」と言う。 「いいえ、解っている」というDelennの声に振り返ると彼女の姿はなく、 彼は一人暗闇に取り残されていた。 彼がDelennを探して歩き出した後ろに、G'Karの姿があった。

深夜にVirが一人でZocaloのバーに座って酒を啜っている横にLennierが現われた。 二人は自分たちの置かれている状況について言葉を交わしていたが、 やがて別れるために立ち上がり、またいつか再会する事を約束した。 始めVirはMinbari式の別れの挨拶をしたが、それからLennierを抱きしめた。 やがてVirはバーを出て行き、移動チューブに乗った。

夢の中のLondoは通路を歩いており、空っぽのZocaloのバーに現われた。 彼は座って空っぽのボトルを調べ、隣の席に現われたSheridanに 「死んでいる気分はどうだ」と尋ねた。 それに対しSheridanは 「死んでから未だ長い事はないがいい気分でないのは確かだ」と答える。 Londoは始めの結婚を身分違いだと家族に反対されて離婚したときに 自分はすでに死んだのだと話し、 さらに歩きだして、夢で観た自分の死の場面にSheridanが居たような気がすると言う。 そして自分たち二人は似た者同士でどちらも死を運命付けられていると言うLondoに、 どんな者でもいずれは死ぬ、死までのわずかな時間をどのように過ごすかが問題だと、 Sheridanは指摘した。 最後にLondoが彼に自分は未だ死にたくないと言うと、 彼は「ならば振り向け」と答えた。 しかし彼は自分の背後にG'Karが立っているのを感じて、「出来ないのだ」とそれを拒む。 SheridanはLondoに「それなら死ぬぞ」と警告し、 「一人で残さないでくれ」と叫ぶLondoを置き去りにして、 まばゆい光の玉に姿を変えて消え去った。

その頃医療室のLondoの容態はさらに悪化していた。 Franklinは彼の左の心臓に大量の薬を注入させるが、一時的な措置に過ぎなかった。 そこに現われたVirが「もう彼は死ぬのですか」と問うと、 「もう見守るしか出来ない」とFranklinは答える。

夢の中のLondoは床に横たわり、慄きながら「未だ死にたくない」と神に呼びかけていた。 するとVirが現われ「それでは未だ死なないで」と言うが、 Londoは他に選択がないと答える。 それに対しVirは、「他にも選択はあるが、今直ぐに選ばなくては」と言う。 何がいけなかったのか、と問うLondoに 「あなたの心臓は良心の痛みに耐えられなくなったのだ」とVirは答えた。 Londoは良心の痛みを感じる事などないとそれを否定するが、 自分の背後にG'Karが居るのを感じていて、 振り向くようにというVirの求めに応じようとしない。 そして自分は20年後に死ぬと予言されており、今死ぬはずがないと強がりを言った。 それに対しVirは、予言は実現すれば現実となるが、そうならなければ暗示に過ぎないと答え、 「もう時間がない、早く振り向くんです」と迫った。 なおも自分が死んだ方がよいと言うLondoにVirは、 「良くはありません、私が寂しいから」と言った。 彼の言葉に促されて、遂にLondoはゆっくりと振り向いた。
そのときラボのLondoはショック状態に陥り、Franklinは緊急チームを召集する。 G'Karが病室に入ってきてVirの横に立ち、その様子を見守っていた。
Londoの夢の中でもG'Karが彼の前に立ち、「さあMollari、形をつけるときだ」と言った。

いつの間にかLondoはCentauri王宮の玉座の間に居て、玉座にはG'Karが座っていた。 Londoが自分は皇帝の地位を欲しかったのではないと主張すると、 G'Karはそうではなく彼にはその資格がなかったのだと答えた。 そして彼に、Refaの命令によるMass DriverによるNarn本星爆撃に対して何の反対もせず、 数百万の命が奪われた事を思い出させた。 さらにG'Karは、Cartagiaの秘密の部屋で彼が鞭打ちをされて殺されかけていたとき、 Londoが何一つ言わなかった事を非難する。 Londoは自分が何か言っても何も変わらなかったと反論するが、 G'Karは彼らが耳を貸すかどうかは問題ではない、 彼には声をあげる義務があったのだと責めた。 そして「出来なかったのだ」と叫ぶLondoに、「だから皇帝の資格はないのだ」と宣告した。
Londoは胸を掴んで苦しみ、G'Karは彼の命は尽きかけていると告げる。 何か出来る事があるはずだと言うLondoに、ただ一言が必要だとG'Karは答えるが、 出来ないのだと言ってLondoはG'Karに掴みかかろうとした。 突然場面は再び鞭打ちのシーンに変わり、 今度はCartagiaの椅子にはG'Karが座っており、縛られているのはLondoだった。 G'Karはその一言を求めてLondoを電気鞭で打たせ始めた。
そのときラボではFranklinがLondoの心臓に何度も電気ショックをかけて、 何とか再び心臓を動かそうとしていた。
39回目の鞭でLondoは大声で悲鳴を上げ、ラボのLondoの心臓は再び動き出した。
夢の中ですすり泣きながら「お前は誰だ、なぜこんな目に会わせるのだ」と問うLondoに 「嘗て彼の心に押し入った時に 残った私の一部かもしれないし、お前自身の良心かもしれない」とG'Karは答える。 そして「麿はこれまで謝った事はない」と言うLondoに対し、 自分が良い人間に変わったと思いたいのだろう、 Centauri本星を破壊しかけたのにとG'Karは言い、 それがお前の人生ならそれを貫き通せ、と彼を突き放して立ち去った。 暗闇の中に一人残されたLondoは、ついに「悪かった、すまない!」と 泣きながら何度も叫んでいた。
ラボではLondoの容態が安定し、Franklinらが出て行った後もG'KarとVirが ガラス越しに彼を見守っていた。 Londoは薄目を開け、G'Karを認めて「すまない、G'Kar、悪かった・・・」と呟く。 それを聞いたG'Karは微笑んで部屋を出て行った。

回復に向かっているLondoは、Virの食べさせる病室の食事にケチをつけていた。 彼はVirに、ふさわしくない肉体を魂が捨てて死に至らしめるというCentauriの民話に ついて尋ねる。 Virはその話は知っているが、それは魂がよほど気高くて一方で宿っていた肉体が 最悪の人物である場合に限られると答えたが、自分が言い過ぎた事に気がついて 言葉を濁す。 しかし部屋を出る前に、「そうです、その話は良く覚えていますよ」とVirは言い残し、 残されたLondoは「不思議だ、麿は聞いた事がない」と呟く。

出発ベイで一人でLennierが座っていると、迎えに来たRangerたちが現われた。 彼らの方に向かうLennierを、後ろから現われたDelennが呼び止める。 「別れも言わずに出て行くのですか」と言うDelennに 別れではありません、今より立派になって戻ってきますとLennierは答え、 「今でも立派よ」と彼女は涙ぐんだ。 そして彼女は最後に「さようなら、親愛なる友よ」と言い、、 二人は別れの挨拶を交した。 RangerたちがLennierと出発した直後にSheridanが現われ、 黙ったままのDelennの肩を抱いて二人は出て行った。


印象に残ったシーン、台詞

Londoの夢の中の黒いベールを被ったDelennは、 「それであなたは生きたいの?」と三度目に問うたときに、そのベールを 頭の上にたくし上げて素顔を見せた。 そしてLondoが「一言」の内容を尋ねると、再びそのベールを下ろした。 この一連の動作は暗示的だが、具体的には何を意味しているのだろうか?

上の場面で彼女がLondoに言った「生き続けたいというだけでは不十分」という言葉は、 LorienがSheridanに尋ねた 「生き続けたい理由はあるか?」を思い出させる。 単に「生き続けたい」だけでは駄目で、真の理由が問題なのだ。

夢の中のSheridanは、次々とその服装を変えてゆく。 始めは地球軍の制服、次に上着を脱いだ姿になり、 さらにDelennが送った制服に変わった。 次のシーンではSinclairが纏っていたようなEntil'Zhaの服に変わり、 さらにMinbariの聖職者のような白いマント姿となって、 最後には100万年後の人類を 思わせる光の球に変わって姿を消した。
この一連の変化が彼の運命を示しているのなら、 彼はいずれEntil'Zhaに就任して、さらにMinbariの聖職者になるのだろうか? また、最後の光の球は、20年後の彼の「死」のシーンの予告だろうか?


Memo

以前にもLennierに指摘されたように、 DelennはEntil'Zaでありながらその地位の重さを 十分理解していないのではと思わせるときがある。 Rangerの誓いの言葉「その人のために生き、その人のために死ぬ。」を逆に返せば、 使命のためには部下のRangerを死地に送らなければいけない立場である。

VirとLennierは#44 "The Fall of Night"以来 定期的にZocaloのバーで会っていたようだ。

LondoはSheridanがZ'ha'dumで一度死に、Lorienに20年の命を与えられた事を知っていた。 誰がその事を彼に話したのだろうか? あるいは彼自身の死の場面と同様に、予知したのだろうか。
Londoはまた、自分の死の場面でSheridanが近くにいる事も感じていた。 これはSheridanがBabylon4に向かう途中で 未来に飛ばされた時のシーンの件である。

Londoのダンサーとの最初の結婚の話は、 #18 "A Voice in the Wilderness Part 1"で 彼がGaribaldiに話している。 ただしそのときの話のニュアンスとは、ややずれているように思う。

必死の治療を続けるFranklinがLondoに言った「私の目の前で死ぬな!」という叫びは、 嘗て死にかけた彼が自分の幻影に 言われた言葉と同じである。

LondoがCentauri本星を破壊しかけたというのは、 恐らくVorlonのPlanet Killerが彼一人を排除するために 惑星にやって来た事を意味するのだろう。

Delennは前話の大統領就任式の場面に引き続き、 白い服を着ていた。 特別の儀式用の服と思っていたが、そうではないようだ。

Lennierが自分を愛している事にDelennは初めて気がついたのだろうか、 それとも以前から知っていたのだろうか? 彼が自分の思いを他人(Marcus)に洩らしたのは、 彼女が誘拐されたときの事だけで、 他には口にしていない様子だ。 しかし彼がIvanovaの言葉「愛は報われないもの」を 伝えた時のDelennの反応は、 Lennierの気持ちに気づいていたのか微妙だった。


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