Babylon5 #91

#91 The Paragon of Animals

粗筋

惑星間同盟の会議場ではDraziを始めとする旧非同盟惑星連合の大使たちが、 議長席のSheridanら首脳部に技術供与の約束を直ぐに果たすよう求めていた。 DelennはG'Karが起草した同盟の「原則の宣言」に調印すれば直ちに技術供与すると説明し、 LondoはCentauriは既に調印している事を表明する。 そしてG'Karは、Centauriでさえ受け入れられるのだから 他国が受け入れられないはずはないと説得するが、 Draziの大使は強硬に調印を拒み、 これまで他国を搾取や侵略した事のないDraziは 彼らに行動の規範について教えを乞うつもりはないと言い捨てて、 旧連合の他の大使たちと共に議場を出て行った。 その直前に議場を覗き込んだGaribaldiは、 入り口の外でSheridanに向かって呆れたというジェスチャーをして見せる。
会議の後、観察ラウンジに佇むSheridanの元にGaribaldiが現われた。 Sheridanから、Londoは原則の宣言の撤回を求め、 G'Karは自分の文章が拙いのではと責任を感じ、 Delennはかなり腹を立てていると聞いた後で、 小国の政府は力しか信用しないのだから、 ここは理念や原則を述べるのではなく力を見せるべきだと彼は進言した。 Sheridanは原則を守らなければ同盟の意義があいまいになるし、 力しか信じない状況を変える事こそが重用だと反論するが、 Garibaldiは現実の困難な状況に目を向けるべきだと答えた。
同じ頃、どこかの惑星上では謎の勢力による爆撃が繰り返されていた。 隠れ家に避難した難民たちの元に一人のRangerが連れて来られた。 避難民のリーダーは皆に、彼が窮状をBabylon5に知らせて 惑星間同盟の援軍を連れてきてくれると説明する。

会議室では、宣言の文面の修正に夢中になっているG'Karを横目に DelennとLondo, Sheridanの三人は旧連合諸国の協力を取り付ける算段を話していた。 机に座り込んだGaribaldiは彼らに、基地に居住地を作ったテレパスたちを 同盟の秘密調査任務に利用するというアイディアを提案する。 テレパスをその任務に使う事は彼らの誓いに反するとSheridanは難色を示すが、 その誓いはPsi Corpsのもので彼らには関係ないし 地球以外ではすでにテレパスをそのような目的に利用しているとGaribaldiは指摘する。 最終的にSheridanは、彼がByronのグループに打診する事を認めた。 彼らの議論を尻目に、G'Karは宣言文の文面作成に夢中になっていた。

Garibaldiは早速Byronに会いに行くが、 テレパスたちはやって来た彼を黙って見つめるだけで声一つかけなかった。 現われたByronは彼が話し出す前に提案を拒否し、 彼の提案もそのために彼が展開しようとしていた議論も全て聞いたと言い放った。 そして許可なく心を読んだと怒るGaribaldiに対し、 彼はこれからやろうとする会話を何度も心の中でリハーサルして その内容をそこら中に撒き散らしており、テレパスにとっては迷惑千万だと指摘する。 Garibaldiは自分たちに協力しなければ大統領に彼らが反抗的だと報告すると脅し、 仕事が欲しいのではなかったのかと迫るが、 自分たちが必要なときだけ擦り寄ってくる組織に利用されるのは御免だと言って、 Byronは彼を追い払った。

ジャンプゲートに攻撃を受けたWhiteStarが一機現われた。 乗っていたRangerは医療室に運ばれるが瀕死の重傷を負っており、 「彼らを救わなければ・・・」と言っただけで意識を失う。 Franklinから彼の命は数時間しか持たないと聞いたDelennは、 彼の心を読むためにLytaを呼んだ。
瀕死のRangerの枕もとに立ったLytaは、 彼に窮状を訴える惑星Enphiliの避難民のリーダーの姿を見た。

海賊がEnphiliの資源に目をつけ、収奪を繰り返すようになった。 彼らは収奪を逃れて隠れたが、惑星は海賊の爆撃に晒されている。 彼らは惑星間同盟の噂を聞き、同盟への加入と救援を求めているが、 もし12日以内に救援が来なければ彼らは全滅するだろう。
突然Lytaの目の前のRangerの枕もとに、彼自身の姿が現われた。 彼は「僕は死ぬんだね?」と尋ね、彼女にEnphiliの人々を救ってくれるように頼む。 彼女が頷くと彼の向こう側に突然白い空間が開いた。 しばらくその前で佇んでいた彼は、やがてその中に飲み込まれた。
FranklinはRangerの死を確認するが、Lytaはスキャンの結果をDelennに話した。

私室の食卓でDelennはJohnにEnphiliの苦境を話した。 彼はGaribaldiの言った通り今は武力行使が必要な時だと言い、 何隻のWhiteStarを援軍として送るべきかを彼女に尋ねる。 それに対し彼女はDukhatの言葉を引用して、全軍を送る事を勧めた。
EnphiliはDrazi宙域の端にあるため、 SheridanはDraziの大使を呼んで、Drazi艦隊も援軍に加わるように要請した。 Draziの大使は本国政府に連絡すると言って部屋を出て行ったが、 彼が急いで廊下を歩いて行くときにByronとすれ違う。

レストランで皿を前に何も食べずに座っているLytaの前にGaribaldiが座って、 彼女に頼み事があると話し掛けた。 彼女はその内容を聞く前に、今日は散々な一日だったと言い、 死ぬ間際の人間の心に入った事を話す。 彼女の話では、相手の死の瞬間あの世の扉が開き、 自分の心の一部も相手の魂と一緒に失われるのだと言う。 そして彼女はさらに、Besterは死後の世界を知るために 死の間際の人間の心に何度も入るうちに、 深く入りすぎて見るべきではないものを見てしまい、 心の中心を失ってしまったというPsi Corpsでの噂を話した。 その後彼女はByronに会って自分たちに協力を要請して欲しいという Garibaidiの頼みを聞いたが、それを断わって席を立った。 しかしGaribaldiは彼女をしつこく追いかけ、 SheridanやDelennは理想を信じて同盟の理想に賭けており、 自分は彼らの力になりたいと思って戻ってきた、 彼らを助けると思って協力してくれと迫り、遂に彼女は頼みを聞き入れた。

真夜中の会議室でG'Karは遂に書き上げた宣言文を手に取って立ち上がり、 部屋を歩き去った。
自分の決断が正しかったかを考えてなかなか寝つけないJohnは、 ベッドにDelennを残して居間に出て行った。 ドアのベルが鳴ったので外に出てみるとだれも居らず、ただ書面が置いてあった。 それはG'Karの手による原則の宣言の冒頭で、彼がそれを手に取って部屋に戻ると 起きてきたDelennが自分のためにそれを読んでくれるように求めた。 彼が宣言文を声に出して読んでいる頃、 G'Karも通路を歩きながら同じ宣言を唱えていた。 Franklinは医療室で死んだRangerの両親へのお悔やみの手紙を執筆中で、 Enphiliでは避難民たちがじっと救援を待ち続けていた。

Lytaが訪ねて来ると一人で現われたByronは、彼女が心を閉ざしていると指摘した。 もう自分の中に誰も入れたくないからと答える彼女に、かわいそうにと彼は言う。 そして彼女がGaribaldiの頼みで使いに来たと言う彼女に、 椅子に座るように命じた。 彼女がそれに従おうとしたとき、彼は突然椅子を蹴飛ばして、「だめだ!」と声を荒げた。 戸惑う彼女を彼は、命令される事に慣れてしまった便利なテレパスと揶揄した。 怒って出て行こうとするLytaに状況を変えたくないのかと彼は声をかけ、 君を救いたいと言って今度は丁寧に座るように頼んだ。 彼は普通人たちは自分たちより優れた能力を持つテレパスを恐れながら 利用していると指摘し、Hamletの一節を引用して、 人間は自らをあらゆる生命の指標と自負しているが、 実際にはお互いを殺しあう残虐な種族であり、 自分たちテレパスと普通人がお互いを信頼し合えるように 状況を改善したいと思っていると彼女に語りかける。 そして彼女が本心からSheridanらを助けたいと思っているのを 「その願いは君にとって重要か?」と尋ねて確認し、 専門的な訓練を受けたテレパスを二人調査任務に派遣するとSheridanに伝えるように言った。 礼を言って立ち去ろうとする彼女に彼は、 Draziの大使とすれ違った際に彼の考えを読んだが、 Enphiliを襲撃している海賊の黒幕はDrazi政府で このままではWhiteStar艦隊はDrazi艦隊の待ち伏せに会うと警告した。

Lytaの話を聞いたSheridanは、予定を変更してWhiteStar艦隊に 直接Enphiliに向かうように指示を出した。 艦隊はEnphili襲撃に現われた海賊たちを一掃し、 その後惑星を囲んで防御陣形を取る。 それを確認して、Sheridanは再び同盟の会議を招集した。
会議の席で彼はEnphiliの状況を示し、 DelennはDraziの大使の質問に対して、 敵の大軍が向かっているという情報があったため WhiteStar艦隊が直接Enphili救援に向かい、既に海賊を一掃したと説明した。 後からやってくる敵の艦隊が壊滅する様子をここで見守ろうとSheridanが提案すると、 慌てたDraziの大使は艦隊に引き返すように連絡するために何とか会議を抜けようとするが、 DelennやLondo, G'Karは彼を引き止める。 遂にDraziの大使は海賊の黒幕が自分たちだった事を認め、 Shadow戦争で共に戦った自分たちを攻撃するのかと泣き言を並べるが、 Sheridanは他の大使たちに尋ねてみろと突き放した。 結局Draziの大使は他の大使たちに謝罪して二度とこのような行為はしないと約束し、 Sheridanは彼に艦隊への連絡を許した。 そこでG'Karが新たに書き直された原則の宣言文を残りの大使たちに配り、 今後今回のような事が二度と起こらない為にと言うSheridanの言葉に応じて、 大使たちはそろって署名した。 Sheridan, Delenn, LondoとG'Karが喜び合っている光景を 会議室の外で見ていたLytaは微笑んで立ち去った。

Sheridanが会議室で大使たちが署名した書面を前に、 又もテレパスに救われた事をDelennと話していると、 G'Karが戻ってきてさらに良い文章を思いついたのでこれから宣言を書き直して 改めて署名を求めると言い出した。 二人は呆れるが、書き直した文面がさらに良くなっている事は認める。 G'Karが出て行った後、SheridanはDelennに テレパスの利用は今後も続けざるを得ないが、注意して進まなければと話す。
その頃Lytaは再びByronに会いに行き、 彼の理想について詳しく話を聞いていた。


印象に残ったシーン、台詞

宇宙は多くの言語を用いて話す。 だが、その声は一つだ。 その言語はNarnのものではなく、地球やCentauri、GaimやMinbariでもない。 宇宙が用いるのは希望の言語だ。 宇宙が用いるのは信頼の言語だ。 そしてそれは力の言語であり、慈悲の言語だ。 そしてまた心の言語であり、魂の言語でもある。 だが常にそれは同じ声だ。 それは我々の祖先が我々を通して語る声であり、 生まれてくるのを待つ我々の子孫の声である。 小さな声だが、確かにこう語りかける。「我々は一つ。」 どんな血が流れようと、どんな皮膚をしていようと、どんな星に住もうとも、 我々は一つだ。 痛みがあろうと、暗闇が訪れようと、多くを失おうと、恐れを感じようと、 我々は一つだ。 我々は共通の大義の下にここに集い、 互いに慈悲の心を持つべきだという唯一の真実を唯一の規定と認識し、 遵守する事に合意する。 各種族の声は我々を高めて豊かにし、 一つが失われれば我々は弱まる。 我々は宇宙の声だ。 創造の魂であり、より良い未来への道を赤々と照らすかがり火だ。 我々は一つだ。 我々は一つだ。
The Universe speaks in many languages, but only one voice. The language is not Narn, or Human, or Centauri, or Gaim, or Minbari. It speaks in the language of hope. It speaks in the language of trust. It speaks in the language of strength and the language of compassion. It is the language of the heart and the language of the soul. But always, it is the same voice. It's the voice of our ancestors speaking through us and the voice of our inheritors waiting to be born. It is the small still voice that says we are one. No matter the blood, no matter the skin, no matter the world, no matter the star, we are one. No matter the pain, no matter the darkness, no matter the loss, no matter the fear, we are one. Here gathered together in common cause, we agree to recognize this singular truth and this singular rule. That we must be kind to one another. Because each voice enriches us and ennobles us and each voice loss diminishes us. We are the voice of the universe. The soul of creation. The fire that will light the way to a better future. We are one. We are one.
: G'Karによって書かれた原則の宣言。

What a piece of work is a man! How noble in reason! How infinite in faculty! In form and moving how express and admirable! In action how like an angel! In apprehension how like a god! The beauty of the world! The paragon of animals! And yet, to me, what is this quintessence of dust? Man delights not me: no, nor woman neither, though by your smiling you seem to say so.
: Byronが引用した、"Hamlet"の一節。


Memo

タイトルの"The Paragon of Animals"は上に引用したHamletの一節である。

Garibaldiが会話を心の中で何度もリハーサルし、その思考をそこら中に撒き散らしている というのは、恐らく彼がTaliaに執着していた時もそうだったのでは。 それが彼女に肘鉄を食わされた原因だろう。

いずれ軍事力を使う事になるというGaribaldiの論理はその通りだとは言え、 Night Sideの討論でのEllisの予言に 乗ってしまっている気がする。

BylonとGaribaldiのやり取りは売り言葉に買い言葉と言うべきか。 Garibaldiの「この基地に置いてやっているのだから協力しろ」という論理には、 Bylonでなくても不快に思うだろうが、一方でBylonの言葉も、 「だからテレパスは嫌われる」というものだ。

今回またしてもテレパスが活躍したが、 これは同時にEdgarsが危惧していたような テレパスによる思想監視社会へ向かう危険性を示している。 この事件もまた、テレパス戦争の遠因になって行くかもしれない。

惑星間同盟の会議の場面での疑問点:
地球同盟の代表者は出席していないのだろうか? 元の四大国のうち、CentauriとNarnはそれぞれLondoとG'Karが代表しているのだろう。 またDelennは同盟大統領の妻なので一国の代表としてふさわしいか疑問だが、 やはりMinbariを代表しているのだろう。 (例えばMinbariでの彼女の権威は絶大で、彼女の最終的な決断でMinbariの総意が決まるとか。) しかしSheridanは同盟の大統領である以上、地球同盟の代弁者にはなれないはずである。 これから同盟全体と地球との利害の対立する場面は出てくるはずで、 その場合Sheridanは調整者として振舞わなくてはいけない。 従って彼とは別に地球の代表者(例えばLochley)が必要なはずである。


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