Babylon5 #93

#93 Learning Curve

粗筋

Minbari本星のRanger訓練施設で、訓練生たちが老Ranger Tuvalから瞑想の訓練を受けていた。 Minbari戦士カーストからの訓練生Rastennは瞑想に集中できない様子で、 座って瞑想するのではなく死を恐れず戦う事を学びたいとTuvalに訴える。 そこにもう一人のRangerの武術師範Durhannが現われ、Entil'Zha Delennから 訓練の成果について報告を求められていると告げた。 TuvalはRastennともう一人の聖職者カースト出身の訓練生Tannierを選び、 Durhannと四人でBabylon5に向かう事にした。 Tannierは「平和の郷」Babylon5を訪問できる事に興奮を隠せない様子だった。
しかしBabylon5のDownbelowでは、新たな暗黒街のボスにのし上がったTraceが、 借金を払わない男を痛めつけていた。 Traceは男を見せしめに殺して死体を目立つ場所に放置するように部下に命じ、 自分に歯向かう者がどうなるかを見せ付けてやると言う。

4人のRangerはBabylon5に到着し、Delennじきじきの歓迎を受ける。 Tuvalは彼女に、訓練の成果を見せるために若い訓練生を連れてきたと説明した。 Delennに向かって挨拶の言葉をかけたTannierは、 話しかけられるまで黙っているようにDurhannにたしなめられるが、 Delennは若い二人の訓練生にも敬意を払って扱っていた。

ZackがGaribaldiと食堂で朝食を食べながら Byronからのテレパスの派遣について話している所に、Lochleyが入ってきた。 Garibaldiは彼女をテーブルに招くが、 話題をそらそうとするZackを無視して 彼女が内戦時にどちらに付いていたかという質問を蒸し返した。 不機嫌な様子で答えようとしない彼女に、 自分たちにはそれを知る権利があると彼は言い返し、食堂は静まり返った。 遂に彼女は自分が自国の政府に武器を向けなかった事を認めるが、 それは自分が兵士として「忠誠心、義務、名誉」を重んじたためだと主張する。 そして怒りながらそのまま食堂を出て行った。
不機嫌そうな彼女が移動チューブに乗ると、そこに居たのはSheridanで、 彼女の顔を見て何があったのか尋ねた。 Garibaldiとのトラブルを話す彼女に、大統領は自分から彼に話そうかと言うが、。 この件は自分で処理すると彼女は断わった。 そして時間は掛かるだろうが彼とも上手くやっていけるだろう、 彼は良いやつだよ、という大統領に、 彼は自分と同じくらい頑固だ、 あんなに手の掛かる男が二人も居るとは知らなかったと答えて 彼女は移動チューブを降りた。

報告を受け駆けつけたZackは、PPGで撃たれて放置された死体を調べていた。 同様の事件が多発しており、 Zackは黙って周囲で見つめる群集に向かって 黙って居ればこれからも事件が起こり、次の犠牲者はお前たちかもしれないと訴える。 彼が立ち去った後、群集に隠れていたTraceは部下に Zackを見せしめのために次の暗殺目標にするように命じた。 部下の一人は警備主任のZackを殺せば基地全体を敵に回す事になると忠告するが、 Traceは以前の縄張りだったBeta7でも 自分のじゃまをする奴は断固排除して来た、 戦争で縄張りを失ってここに来たが 出て行くつもりは無いと言って部下を脅し、聞く耳を持たなかった。

DurhannとTuvalはDelennに、彼女の指示通りRanger訓練生の受け入れを 他の種族にも増やしたが、Pak'ma'raの訓練生には手を焼いていると説明した。 二人は、Pak'ma'raは愚かで自国の言葉しか話そうとせず、 腐敗した肉しか食べないために悪臭も酷く、 彼の部屋は他の候補生の部屋とは遠く離していると言い、 Delennの理想は立派だが現実は難しいのではと疑問を挟む。 それを聞いたDelennは、 ジャンプエンジンに欠かせない物質であるquantum40を扱うPak'ma'raは 何処にでも姿を見せるが賎しまれているために誰も彼らに注意を払わない、 その特性を生かす役割があるのではと指摘し、 情報の運び屋として最適である事を示唆した。 その結果Pak'ma'raの候補生に潜入と暗号の訓練を受けさせる事になった。
会談の後、TuvalはDelennにMarcusの死に対してお悔やみを言った後で Lennierが自分の価値を誰かに示したいがために 訓練に没頭し過ぎているのでは、と指摘する。 Delennは心当たりがあるため顔を曇らせ、 その状態が変わらなかったら自分に報告するように求めた。

GaribaldiはZackと、Byronから派遣された二人のテレパスとの面談をしていた。 仕事の内容を説明し、二人が帰った後で、 GaribaldiはZackにLochley司令官の個人ファイルを見せるように求めた。 Zackは拒否するが、Garibaldiは彼女が信頼できるかを知る必要があると執拗に迫った。 そのとき殺人事件の黒幕を知っているという女性が現われたという情報が入り、 Zackは彼女に会うために部屋を出て行った。

Tuvalらに基地を観察するように勧められたTannierとRastennは、 Downbelowの一角を歩いていた。 その頃Traceは若い女に指示通りZackをおびき出したかを確認していた。 彼女は頷くが、Traceが部下に命じた言葉を聞きとがめて、 Zackを殺すという話は聞いていないと抗議する。 通報に行きかねない様子の彼女をTraceの部下が捕えるが、 その騒ぎをTannierが聴きつけ、関係ない事に口出ししない方がよいという Rastennを置いて一人で様子を見に行った。 Tannierは女性を救おうとしてMinbariの護身棒でTraceの部下と戦い数名を倒すが、 背後から襲われて倒れ、殴る蹴るの暴行を受ける。

DelennとRangerたちは医療室のTannierを見守っていた。 FranklinはDelennに、Tannierの命に別状はないが人間なら死んでいた所だと説明する。 Rastennは助けられた女性が警備を呼んだので犯人は逃げ去ったと言い、 Tannierを一人で行かせた事を悔やむ。 DurhannはFranklinに、彼が立てるようにしてくれれば後は自分たちでやると言い、 「Mora'Dum」と言って立ち去った。 尋ねるFranklinに、Mora'DumとはRangerの訓練の一つであり、 「恐怖への適応」だとDelennは説明する。

Lochleyは訪ねて来たDelennに、Tannierから犯人に関する供述を取りたいと言うが、 これは自分たちの手で処理するとDelennは答えた。 Lochleyは基地の治安を守るのは自分の権限であり、 Rangerが勝手な真似をするのは許さないと主張するが、 同盟の全種族はRangerの独立性を承認しており 現地の警察や警備よりRangerの権限が上だとDelennは反論し、 大統領も彼女の決定を支持している事を指摘した。 「それは彼らしくない」とLochleyは言い、Delennは怪訝そうな顔をする。 誰かが怪我をする度に復讐するのは許されないと皮肉るLochleyに、 「復讐ではなく恐怖だ」とDelennは答える。

RastennからTannierの様子を聞いたTuvalは、 Tannierの肉体の傷は癒えてきているがお前の心の傷はどう癒すべきかと尋ねた。 Rastennは自分は無意味な死を恐れてTannierを一人で行かせてしまった、 名誉ある死は恐れないが無意味な死は恐ろしいと言うと、 Tuvalは他人に認められる事が重要なのではなく、 自分自身が意味を見出す事が出来るかが重要なのだと彼を諭した。 礼をして出て行くRastennと入れ替わりにDurhanがTannierの病室に入ってきて、 Tuvalに彼の訓練は終わったかを尋ねる。 そして次はTannierに恐怖に立ち向かわせる番だと二人は言った。

DelennはLochleyに、Tannierの内なる恐怖が彼を内側から侵食している、 彼はそれに立ち向かわなくてはいけないと説明した。 そして彼は立てるようになると直ぐに一人でDownbelowに向かい、 Rangerたちは彼を見守っていた。 それでは彼は孤立無援だと言うLochleyに、 人は死ぬときは皆一人だとDelennは答える。
Zackの命令で、Traceのアジトの周囲から警備班が姿を消した。 それを知ったTraceは自分が勝ったと思い込むが、その直後に明かりが消え、 非常灯が点灯する。 様子を見に行かせた手下が何者かに襲われて連絡が途絶えたのを知ったTraceは、 残りの手下に前後を固めさせて脱出しようとするが、 手下は次々とRangerに殴り倒され、姿を消した。 恐怖に駆られたTraceは味方に発砲し、一人で逃げ出したが、 気がつくとRangerたちに囲まれていた。 彼の前に護身棒を持ったTannierが立ち塞がり、Traceの足元にも護身棒が投げられる。 フェアじゃないと抗議するTraceだが、 Tannierもこの武器は十分習得しておらず、彼を倒せば自分たちは邪魔をしないと Durhanに言われ、結局はTannierと勝負するしかなかった。 DurhanとTuvalは二人の戦いを見守りながら、 「これが典型的なガキ大将の姿で、自分では出来ない事を他人にやらせようとする」 「Pak'ma'raの方がよほど素質がある」とTraceを揶揄する。 遂に双方棒を捨てての素手での殴り合いの末にTraceは床に倒れ、 Tannierは「彼の名は忘れられ、自分の名は自分の心の中に残る」とTuvalに言った。

出発ベイで四人を見送るDelennは、 Minbariに戻ってくるように言うTuvalに、ここでの仕事が残っているが、 いずれSheridanとMinbariに行ったときはTannierを部下に貰いたいと答えた。 そしてDurhanに、Tannierの棒さばきは見事で、 多分彼がじきじきに指導したのだろうと指摘した。
モニターで出発ベイの様子を見ていたGaribaldiは、 Minbari人は遺伝的に戦いを避けられないのではとZackに声をかける。 そして以前DelennがDrakhに
遭遇した際に、 軽微な被害で逃げられたのに戻って相手を壊滅させた事や 地球との戦争の経緯を挙げて、Minbari人は決着がつくまで 争いを止められないようだと指摘する。 その後Lochleyの個人ファイルの件を蒸し返した彼に、 引き際を知らないのはMinbari人と同様だとZackは言って部屋を出て行った。

その夜、ベッドに座ったDelennはJohnに、 Lochleyが「彼らしくない」と言った意味を尋ねた。 Johnは困った顔をして寝室のドアを閉める。
ベッドの中でDelennはJohnに背中を向け、 その事を言う時期を選んでいたという彼に、 そう思ったときがその時期だったのではと言葉を返した。 そして自分は大丈夫だがしばらく時間が欲しいと彼女は言い、 彼は黙ってライトを消した。


印象に残ったシーン、台詞


Memo

TuvalとDurhannはいずれもSechという尊称つきで呼ばれている。 SechはRangerの師範の称号らしい。

Durhannは有名な戦士カーストの武術師範であり、Neroonも彼の弟子であった。

第一シーズンで暗黒街のボスだったN'grathは何らかの理由で姿を消したようだ。

Tuvalによると、新たにRanger訓練生に加わった旧非同盟惑星出身者は、 Draziが二人、Yoluが一組、Abbaiが三人とPak'ma'raが一人である。 Yoluという種族は初めて言及されたが、二人ではなく「一組」と言われているのは 何らかの意味がありそうだ。

若い二人の訓練生がDownbelowで騒ぎを聞きつけたとき、 聖職者カースト出身のTannierが介入に積極的、 戦士カースト出身のRastennが「関係ない事だ」と消極的だったのは面白い。 嘗てDelennがGrey評議会を解散した際に、 彼女が戦士カーストの評議員に向かって、 彼らが「他人の問題は我々には関係ない」と手をこまねいていると 非難したのを思い出させる。

ZackがTraceのアジトの周囲から警備班を引かせた時に、 抗議した部下に対する 「Delennから(Sheridan)大統領に、大統領から司令官(Lochley)に、 司令官から俺(Zack)へ指示があった。」 という彼の返答が面白い。 つまり、Sheridan大統領よりもDelennの方が立場が上という事を暗示している。

GaribaldiのMinbari人の性質についての分析は、なかなか鋭いと思う。 確かに、Drakhとの会戦時のDelennの指揮は意外なまでに好戦的だった。

最後のシーンでDelennが不機嫌なのは、 Johnが過去に関係があったLochleyを新司令官に据えた事だけではなく、 彼が自分に隠し事をしていた事もあるだろう。 彼女はJohnがZ'ha'dumで消えてから、 「Minbari人から姿を変えた自分は考え方も変え、 全てを彼に話すべきだった」と述懐していた。 それが彼の方は重大な秘密を彼女に黙っていた訳で、やや裏切られた思いがあるのでは。
もちろんJohnとLochleyとの過去もDelennにとっては大問題で、 そういう目で見るとDelennとLochleyの権限争いはもっと隠微な意味を持ってくる。

今回の一連の出来事で、Babylon5は二重権力どころか、 Sheridan大統領を頂点とする惑星間連合、 Entil'Zha Delennを頂点とするRanger組織と Lochley司令官がトップの基地スタッフという三重権力構造になっている事が判る。 こうなってくると、さらにLochleyの権限は制限されたものになってしまう。


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