Babylon5 #97

#97 In the Kingdom of the Blind

粗筋

惑星間同盟諸国の貨物船が、各地で謎の敵によって破壊される事件が相次いで起っていた。 Garibaldiが示したRangerによる調査報告書を見たSheridanは始め海賊の仕業と思ったが、 Delennは敵が貨物に手を付けず破壊を目的としている事を指摘する。 Garibaldiは、これは略奪ではなく強力な軍による軍事作戦だと推測していた。 24時間以内には同盟の全加盟国に事態が知れ渡る事になるため、 SheridanはRangerに敵の正体をつきとめさせるように命じた。
その頃またしても一隻の輸送船が攻撃を受け、破壊されていた。 攻撃して来た船の紫色の三日月型の翼がちらりと見えた。

人々が談笑しているCentauri王宮に、到着したばかりのLondoが入ってきた。 彼がG'Karを伴っているのを見て、人々は黙り込み、不安げに彼らを見つめる。 G'Karを慰みのために連れてきたのだろうが、 皆が不安に思うから鎖を付けて牢にぶち込みましょうと言うVitari大臣に、 彼は自分のボディーガードだとLondoは答え、二人は部屋に向かった。

Byronは仲間のテレパスたちを集め、VorlonがShadowとの戦争の道具として 自分たちテレパスを作った事を説明し、自分たちの状態にVorlonは責任があると言った。 VorlonもShadowも既に銀河を去り、誰も残っていないとLytaは指摘したが、 それなら戦争で利益を得た惑星間連合が自分たちを救う義務を負っていると 彼は主張する。 そして仲間に、危険な道ではあるが惑星間同盟に自分たちの言い分を認めさせる方法が あると言った。

ドアの外に立つG'Karのボディーチェックを受けてLondoの部屋に入ってきたのは、 彼の旧友のJano公爵だった。 Londoに摂政の様子を尋ねられたJanoは、 摂政はここ数ヶ月というもの公式には側近と医者以外には会っていないが、 夜中に宮殿を徘徊しているのが目撃されており、 独り言を言ったり、重要な話があるといっては直ぐに顔色を変えて口を噤んだり、 一度はひどく酔っていたものの自分を殺してくれと護衛に頼んだ事もあると話す。 摂政が酒を飲まない事を知っているLondoは首をかしげるが、 Janoはさらに、Centauri艦隊の行動報告や穀物生産などの各種統計類が すべて極秘扱いとなり、Janoの調査も止めるように圧力がかかった事を話し、 うまく説明できないが宮廷に暗闇が立ち込めている、何かいやな感じがすると言った。
Londoとの会談の後で自分の部屋に戻ったJanoは、 暗闇の中に摂政が座っているのを発見した。 摂政はこわばった笑いを顔に浮かべながら取り留めの無い話をしたが、 最後に自分は彼を傷つけたくないがどうにもならないと言う。 はっとしたJanoは向き直り何かを見るが、 その直後にいきなり何かの力で壁に叩きつけられ、床に崩れ落ちた。

Babylon5では、同盟の会議が終わって出てきた各国の大使たち一人一人の後ろに、 Byronの仲間のテレパスたちがくっついて跡をつけていた。 作戦の開始の報告を受けたByronはLytaに、 今後24時間のうちに君の支えが最も必要になると言い、彼女にキスをする。 そして彼はGaribaldiのオフィスを訪ねた。

翌朝、Centauri王宮ではVitariがLondoに、 摂政は加減が悪くて彼に面会できないと説明していた。 一方でJanoも姿を見せないため、LondoはVitariに彼を探してくるように命じる。 Vitelliが立ち去ると、周囲のCentauri人たちはG'Karを取り巻き、 珍しそうに彼の服に触ってみた。 そのときVole大臣が、LondoがG'Karを護衛として王宮に連れてきた事を非難した。 G'KarがVoleの言葉に激しく反論すると、Voleは彼の前に一人の衛兵を連れてきた。 それはCartagiaの命令で彼を鞭打ちにした衛兵で、 VoleはG'Karに電気鞭を手渡し、衛兵の命を彼に預ける、 彼をどのように扱ってもよいと言って挑発した。 鞭を手にしたG'Karはゆっくりと衛兵の背中に回り、あたりは静まり返った。 しかしG'Karは、衛兵は命じられたら従うしか出来ない手に過ぎず、 命じた心はCartagiaと共に死んだと言い、その鞭を捨てた。 そのときVitelliが慌ててLondoを呼びに戻ってきた。 彼らが見たのは自分の部屋で首をつっているJanoの死体だった。 昨日の彼は死ぬような目をしていなかったとG'Karは言い、 Londoも彼は自殺するはずがない、殺されたのだと答えた。

Garibaldiのオフィスを訪ねたByronは、 同盟の会議での発言を許可して欲しいと頼むが、 Garibaldiは発言内容を事前に教えないなら駄目だと答える。 Byronは横を向いた彼をにらみ付けたあとで、 頻発している輸送船への襲撃に関する独自の情報で、 事前に詳しい内容を明かすと却って策略だと誤解されると嘘を言った。 それを聞いたGaribaldiは考え込む。

ByronとLytaは同盟の会議の席に招かれ、Sheridanに発言を許された。 しかしByronは事前の申し合わせに反し、 テレパスはVorlonの遺伝子操作によって対Shadowの生体兵器として作られたものだと話し出し、 Lytaはそれを証明する資料を配布した。 そしてByronは、同盟は彼らに道義的責任を負っていると主張し、 各国の非居住惑星を割譲してテレパスの祖国を建設する事を要求した。 怒ったSheridanは彼の要求を突っぱねて黙らせようとするが、 Byronは彼の言葉を途中で奪って話し続け、 ここ二日間各国の大使の跡を仲間のテレパスがつけてスキャンして 大使たちの重大な機密を握ったと言い出し、 祖国をくれるなら二度と姿を見せないが、 自分たちの要求が入れられなければ機密を暴露すると脅しをかけた。 議場がざわめき、議長席のSheridanとDelennが凍りついたように立ちつくす中、 ByronとLytaは部屋を出て行った。

大使たちが立ち去り、床にLytaの配った文書が散らばる議場で、 Garibaldiは自分が馬鹿だった、もう二度とテレパスを信用しないと激しい憤りを露にした。 Sheridanは彼を宥め、実際にはテレパスたちは大した機密を握っていないのではと言うが、 大使たちは最も知られたくな秘密を知られたと想像するだろうとDelennは指摘した。 彼女はさらに、自分たちがテレパスたちに道義的責任があるのは間違いなく、 彼らの主張にも一理あると言うが、 仮にそうでも時期と方法が不適切だとSheridanは答えた。 それを聞いたDelennは、 「内戦が終わった後で、地球の大統領も あなたと同じ事を言っていた」と言って 議場を出て行き、残されたSheridanは渋い顔をする。 今の所事態は外交問題であり、暴力沙汰にはなっていないと言ってSheridanも出て行くが、 一人残ったGaribaldiは、「今のところはね」と独りごちた。

Centauri王宮では、摂政が面会すると言ってVitariがLondoを呼びに来た。 LondoとG'Karが摂政の寝室に向かう途中の通路で、 二人は何者かが剣を抜いて後ろから迫ってくるのに気づく。 G'Karが暗殺者に立ち向かっている隙に二人の間に落とし扉が落ち、 Londoは一人になった。 彼の前に現われたVoleは、お前はCentauri本星に戻ってくるべきで無かった、 お前は自分の野望のじゃまだと言って、短剣を彼にめがけ投げつける。 しかしその短剣は空中で止まり、向きを変えてVoleの心臓に突き刺さった。 Londoが振り向くと、その物陰には目を赤く輝かせた謎の異星人が立っていた。 落し扉が上がり、暗殺者を片付けたG'Karが飛び込んで来る。 もう一度Londoは部屋の隅を見るが、謎の異星人の姿は消えていた。 難を逃れた二人は、急いでその場を立ち去る。

Byronの指示に反して物資の補給のためにコロニーを離れたテレパスの一人が、 彼らの脅迫に怒ったDraziの一団に襲われた。 それを感じた他のテレパスたちは、Byronの制止を振り切って彼を救いに向かい、 Draziと乱闘になる。 恐れていた暴力の連鎖が始まった事を知ったByronは頭を抱えた。
事件の知らせを受け、各国大使たちとの討論が終わった議場に 独り座っていたSheridanの元にZackが現われ、 Lochley司令官がテレパスたちの逮捕許可を求めている事を伝える。 Sheridanは、Delennの言うように自分たちはテレパスに今以上の義務を負っているのかも しれないが、この状況では彼らにしてやれる事は無いと言い、 テレパスへの保護を撤回する事をZackに伝え、 必要な手段を取るように命じた。
警備班が間もなく自分たちを捕えに来る事を予期したByronは、 周囲の防御ドアを溶接して移動チューブを止めて篭城するように仲間に指示した。 しかしテレパスの一人は篭城しても成算がないと反対し、 逃亡生活を終わらせて祖国を得るために外に出て、必要なら戦うように求める。 そしてDraziから取り上げた武器を示す彼を制止したByronは、 「お前たちは何を学んだのだ」と苛立ちを見せる。 そして「出て行きたい者は出て行け」と言うByronの言葉に即されて、 一部のテレパスはコロニーを後にした。

ViteriはLondoに、皆が彼の無事を安堵している、 Voleの野心には摂政も手を焼いていたがこれで問題は片付いたと言うが、 摂政の事をLondoとG'Karに追求されるとしどろもどろになった。 そのときLondoは、通路の曲がり角で誰かが手招きしているのに気がついた。 二人はViteriを放してそちらへ向かい、玉座の間の前に来た。 LondoがG'Karを制して一人で中に入ると、 椅子の陰から現われたのは酔った様子の摂政だった。 彼はLondoの命を救えて良かったと言うが、 Londoを救ったのは自分ではなく「彼ら」だと言う。 そして「彼ら」はCartagiaの遺産でLondoが自分たちに似ているから好きなのだと続けるが、 「彼ら」とは誰か、というLondoの問いには怯えた様子で答えなかった。 さらに摂政は、もう直ぐお前は皇帝となって自分の後を引き継ぐが本当に気の毒に思うと言い、 「彼ら」からの伝言として、艦隊や供給物資に関する調査を中止するように求めた。 そのうちに全て解ると言う摂政に「今知りたい」とLondoは反論するが、 摂政は「駄目だ、これまで私を信じていたのなら、今も信じてくれ、 お前には未だ時間がある、それを楽しめ。」と答え、 急に声を潜めて、「愚か者のように、お前にはもう僅かしか時間が無い」と続けた。 そしてLondoに直ぐに立ち去るように言った。
玉座の間から出たLondoは「何か判ったか」と尋ねるG'Karに「判らん」と答え、 二人は立ち去った。 玉座の間では、摂政の前に異星人が現われ、 「何も喋っていない」と怯える彼の首をKeeperの触角が締め上げ始めた。
ベッドに入ったが眠れないLondoは、ドアの前に横になっているG'Karに、 一ヶ月は居るという予定を変更して翌朝Babylon5に向かうと告げた。 そして子供の頃から王宮で暮らしてきたが、初めて恐怖を感じた、 「彼ら」はCentauriの艦隊を使って何をしているのだろうと呟く。 その頃非武装のBrakiri船がCentauri戦艦に攻撃を受け、破壊されていた。

ベッドの中のByronとLytaに、 Zackが篭城を続けるテレパスたちに投降を呼びかける声が届いた。 ZackはさらにLytaを名指しして、 直ぐに出てくれば処分の軽減を図るが、 大統領命令に反して投降を拒めば警備班との直接対決になると警告した。 ByronはLytaに、せいぜい数日しか持ちこたえられない、 いずれ君に自分を置いて行くように頼む時が来るが、 そのときはそれに従ってくれ、と言った。 Lytaはそれを聞いて悲しげな表情を浮かべながらも、 そうすると約束をした。


印象に残ったシーン、台詞

「お前には未だ時間がある、それを楽しめ。 日の光を浴びて、走れ。食べて、笑え。」
奇妙な音が聞こえ、摂政は表情を変える。
「愚か者のように。残された時間は少ないぞ。 さあ、行くんだ、急げ!」
問い返すLondoを制し、真顔になって、 「また話そう、終わりが来る前にもう一度。さあ、行け! 早く!」
玉座の間でのCentauri摂政のLondoへの最後の言葉。 彼は何とかLondoに警告したかったのだろうが。


Memo

Byronの説明では、この話は#95 "Secrets of the Soul"で Vorlonが遺伝子操作によってテレパスを作った事が明らかになった次の日から始まっている。 またCentauri王宮での展開は、#94 "Strange Relations" の最後にLondoとG'KarがCentauri本星に向かった話の直接の続きでもある。 従って、前話の#96 "Day of the Dead"の物語上での時間順は、 放送順と違う事になる。

Londoの地位は、首相兼在Babylon5大使らしい。 とても不思議な状況だが、Centauri共和国の政体自体がかなり不思議なものだから、 この程度で悩んではいけないのだろう。

Byronが同盟の会議での発言許可を求めた時のGaribaldiの対応は、 ずいぶん権威主義的である。 そもそも彼にはそこまでの権限があるのだろうか?

Centauri王宮に現われた異星人は恐らくDrakhである。 ただ、Londoをテレキネシスで救った異星人と、摂政の前に現われた異星人とは 見かけがやや異なっている。 別々の種族なのだろうか、それとも個体差の範囲だろうか?
また前者がDrakhだとすると、彼らは強力なテレキネシスを持っている事になる。

ByronにもSheridanにも、またLochleyにもそれぞれ悪意は無いのにも関わらず、 事態は最悪の方向にと進展してしまった。 Delennの言う通りByronの主張には一理あり、Shadow戦争への彼らの貢献を考えれば 同盟には彼らを救う道義的責任がある。 しかし輸送船への攻撃が頻発し、どの種族も疑心暗鬼になっているこの時期に、 Byronがテレパスの祖国を要求したのは最悪のタイミングだったし、 要求を通すために使った脅しの方法も最悪だった。

暗殺者に襲われたLondoとG'Karが、落し扉で別れ別れになるときに お互いの名前を呼び合うシーンは、考えてみると結構笑える。

LondoをCentauri本星に送る船に爆弾を仕掛けて 彼の暗殺を試みたのは、どうやらVole大臣だったらしい。

Cartagia皇帝の時代、現摂政は大臣とは名ばかりで粗末に扱われていたようだ。 彼の言では、Londoだけが彼に良くしてくれたとか。


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