Babylon5 #23

#23 Points of Departure

粗筋

2259年1月8日、「一ヶ月後に戻ってくる」と貨物船への通信を終了して Omega級駆逐戦艦Agamemnonを土星の近くから亜空間へジャンプさせたSheridan艦長に、 統合参謀本部のHague将軍からGold Channelで通信が入った。 将軍はBabylon5の近くの地球管轄宙域でMinbariの巡洋戦艦が再三目撃されており、 敵意を持っているらしいと告げる。 この戦艦Trigatiは地球-Minbari戦争終結時にMinbari軍の指揮を離れた反乱艦で、 彼の任務はMinbari軍のTrigati捜索への協力だった。 Sheridan艦長は自分が嘗てMinbari戦艦を破壊した事で Minbariから敵視されているために、 この任務に支障をきたすのではと言ったが、 将軍はその懸念は理解した上で、 彼にBabylon5に赴いてもう一つの任務を遂行するように告げた。

同日Babylon5では、副司令官のIvanovaが混乱状態の基地の指揮を取っていた。 Santiago大統領暗殺から8日、Sinclair司令官が地球に呼び戻されて5日が過ぎており、 狙撃されたGaribaldiはFranklinの懸命の治療にも関わらず未だに危篤状態で、 Delenn大使の部屋ではなにか異常な事が起こっていた。
Ivanovaの元にHague将軍から通信が入り、 Sinclair司令官はこのまま基地に戻らずにMinbari連邦への最初の終身大使として赴任し、 Sheridan大佐が後任のBabylon5司令官になる事が告げられた。 Ivanovaもまた、この人選は議論を起こすのではと懸念を示す。

Delennの部屋ではLennierが彼女の繭の不寝番を続けていた。 そこにもう一人のMinbari人Hedronnが入ってきて、彼に向かって 「それでは彼女は始めてしまったのだな?」と話し掛けた。 彼は自分たちは彼女に変化を待つように言ったが彼女は聴かなかった、 この事を評議会に報告しなくては、と言う。 さらにLennierにTrigatiがこの星域に出没している事を告げ、 もしBabylon5の近くに現われたら地球人たちの所に言って 真実を告げるように命じた。

Sheridanが護衛もつけずに基地に到着したのを聞いたIvanovaは 慌てて彼をドッキングベイに迎えに行った。 彼女は彼の荷物を部屋に運ばせてから、基地内の案内を始めた。 彼女からGaribaldiやG'KarやDelennやKoshの事について説明を受けた彼は一言、 「面白そうな場所だ」と答えた。
その頃基地には新たに一人のMinbari人が現われ、 外交官地区であるGreen区の場所をコンピュータに尋ねていた。

基地の案内の後、SheridanはIvanovaに 自分が司令官に選ばれたのは異星人との交渉経験が豊富だからだろうと言ったが、 それを聞いた彼女は、 Minbari人の間で彼は"Starkiller"と呼ばれて嫌われており、 彼がBabylon5の司令官になった事を彼らは不快に思うだろうと注意した。 しかし同時に彼女は嘗てIoで彼の元で働いていた事があり、 この混乱した状況のなかで再び彼に会えた事は喜んでいた。 彼女が基地のクルーはSantiago前大統領の死によって不安になっており、 彼女自身もあの映像をなすすべもなく見守るしかできなかった自分に 無力感を感じていると話すと、彼は自分も同じだと答え、 クルーへの「幸運のスピーチ」の準備を始めた。

HedronnはGreen区に向かうMinbari人Kalainを見つけて追跡したが、 彼に逆に捉まりGrey評議会はMinbariを裏切ったのかと脅された。 Kalainは通信を傍受してSheridanがBabylon5の新司令官に選ばれた事を知り ここに現われたのだった。 Hedronnはこの決定はGrey評議会の意思に反したものだと言うがKalainは納得せず、 Delennもまた評議会を無視したのかと問うた。 さらに彼はSinclair前司令官はMinbariの終身大使に赴任したという話も 受け入れず、Hedronnに直ぐに基地から出て行くように脅迫した。

Sheridanがクルーを集めて「幸運のスピーチ」を始めると直ぐに、 Hedronnが彼に面会を求めてきてスピーチは中断された。
その頃KalainはGreen地区に侵入し、止めようとした警備員を倒して 彼の武器を奪った。

HedronnはSheridanとIvanovaに、 Trigatiの副司令官Kalainが基地に潜入しており、 事件を起こす可能性が高いと警告した。 地球-Minbari戦争終結時のGrey評議会による降伏命令に対し Trigatiの司令官Sinevalは命令を拒んで自殺し、 副司令官のKalainが指揮を取るTrigatiは姿をくらませていた。 SheridanはTrigatiはこれまで10年以上に渡って時折目撃されていたが 特に攻撃してくる事はなかったというが、 Hedronnは最近になって状況が変化したと答えた。
SheridanがHedronnは彼自身の主張している文化省の役人という地位にしては 戦士カーストの事情に詳しすぎると疑問を挟むと、 それに答えるのはSheridanの地位を認めてからだが、 彼の司令官就任についてSinclairの時とは違ってMinbariには何の相談もなかったと Hedronnは言う。 それを聞いてMinbariは地球同盟管轄の事に口を挟みすぎると反発するSheridanに、 Hedronnは彼のような人物がこのような重要な地位に就くとは残念だ、 我々は彼によって多くの優秀な戦士を失った事を簡単には忘れない、 この基地が悲運を辿るとすればそれは彼のせいだ、と言い捨てて立ち去った。
SheridanはIvanovaに、Hedronnは聖職者カーストでありながら戦士カーストの事情に 詳しすぎる、恐らく彼はGrey評議員に違いないと話し、 Minbariが自分を嫌っているとIvanovaが言ったのは正しかった、と言った。 彼女がBlackStarを破壊した方法を尋ねると、 彼はMinbari艦はある種のステルス技術によって地球軍の武器をロックできなかったので、 艦を直接狙わずに小惑星帯に核融合機雷を敷設して、 旗艦BlackStarを始め4隻の戦艦を破壊したのだと説明し、 この件に関して自分が謝罪する理由は全くない、と言った。
そのとき二人はKalainについてのHedronnの警告を思い出し、 彼がMinbari本国に裏切られたと考えているため、 政府の代表者を襲う可能性が高いことに気がついた。 二人は急いでDelennの部屋に駆けつけた。 そこで彼らが見たのはLennierに銃を向けているKalainだった。 SheridanはDelennの繭に近づこうとするがLennierは彼を制止し、 大使はお加減が悪いので出直してくれと言った。 彼らはKalainを拘束し、Trigatiの行方と彼がここに現われた理由を追求した。 Sheridanは彼の目的はDelennとLennierを殺す事ではない、 彼がそれを実行するつもりなら十分な時間があったのだからと言うと、 KalainはMinbari人同士が決して殺しあわないのは皆が良く知っている、と答えた。
なおもSheridanが彼を厳しく追及しようとするのをIvanovaが止め、 二人がオフィスへ向かおうと拘束室を出た所を待っていた Lennierが呼び止め、先ほどの非礼を詫びた。 そして彼らに話さなければならない事がある、 これはSheridanがここに赴任する理由となったSinclair前司令官のMinbari大使赴任と、 Minbariが勝利目前で地球に降伏した理由に関係ある事だと言い、 Sheridanのオフィスで二人に話し始めた。

Minbariの指導者Dukhatが地球艦の攻撃で殺され、 その報復のための「聖戦」が始まって3年後、 戦争は終わりを迎えようとしていた。 Minbari艦隊は地球艦隊をほぼ一掃して地球間近にまで攻め込み、 地球の残存艦隊は最終防衛線を死守しようとしていたが、 Grey評議会は最終的な勝利を確信していた。
ここで画面は、評議員の乗る戦艦の会議室に移った。 周囲には戦況を見せるディスプレー映像が広がっている。
Delennは地球軍が勝ち目が無いにも関わらず戦い続けている事に驚き混じりの賛辞を送り、 Hedronnに彼らの最終防衛策についての情報を得るために捕虜を取る事を求めた。 そして彼女が選んだのが、 ちょうど戦艦に特攻を仕掛けてきたStarFuryのパイロットだったSinclairだった。
Lennierの話では、これがGrey評議会にとっては初めての地球人との対面だった。 艦内に引き込まれたSinclairは尋問、拷問とスキャンを受け、 その結果驚くべき事実が判明した。 始めはその事実を信じられなかったが、 他の捕虜に対するスキャンの結果もそれを確認した。
Minbariは自分たちの魂は死後他のMinbari人に生まれ変わると信じていたが、 ここ二千年ほどの間、生まれ変わるMinbari人の数が減少を続け、 魂がどこかに行方不明になっていた。 この最終防衛線の戦いで、彼らは行方不明の魂が 地球人として生まれ変わっている事を発見した。 その結果、それらの魂を守るために、評議会は地球への降伏を決断した。 しかしこの事実を明らかにすればMinbariと地球の両方の社会に大混乱を招くため、 Grey評議会は理由を伏せて軍に降伏を命じ、Sinclairの心からも 捕虜となった記憶は消去された。

なぜ今になってこの秘密を明かしたのかというIvanovaの問に、 Lennierは変化の時が来たからだ、Sinclairはその最初だ、と答えた。
彼らの話は、司令室からのジャンプゲートに攻撃態勢のMinbari戦艦が現われた、 という知らせで中断された。 Sheridanは司令室に戻り、非常警報を出して全StarFury中隊に待機を命じた。
その頃拘束室のKalainは、口に手を入れて義歯を外しそれを開き、 中から青い液体を出して飲み込んだ。

Sheridanは現われたMinbari戦艦Trigatiに呼びかけると、 対応した士官DeeronはKalainの返還を要求した。 そしてSheridanが拒否し、基地への攻撃は戦争を意味すると警告すると、 彼女は「すでに戦争は始まっている、我々に残るのは名誉と死だけ。」と答えた。 実際にはまだ誰も死んでいないのだから、この返答にSheridanは混乱したが、 突然彼はTrigatiがこちらに攻撃をさせて戦争を起こそうとしているのだと気がついた。 そのときKalainが自殺したという連絡が入り、彼の確信は深まった。 IvanovaはMinbariの魂が地球人に生まれ変わっているのなら、 なぜ彼らは攻撃してくるのだろうと言うが、 SheridanはTrigati側にはその話は伝わっていない事を指摘した。
Trigatiからは戦闘機部隊が発進したため、 彼はZeta中隊を発進させ、迎撃体制を命じた。

両攻撃部隊の動きを示すディスプレー表示を見て、 彼は基地のシステムがMinbari戦闘機を追尾できているのに気がついた。 戦時中は地球軍はMinbari艦を追尾する事ができなかったため、 彼はIvanovaにシステムを変えたのか尋ねたが、 彼女は戦時中と同じシステムだと答えた。 それを聞いた彼は、Zeta中隊に位置を保って待機するように命じ、 替わりにジャンプゲートを開いて亜空間へメッセージを送らせた。
皆が息を飲んで見守る中、 Minbari戦闘機部隊はStarFury中隊をそのまま行き過ぎて母艦に戻って行った。 そのとき再びジャンプゲートが開き、新たなMinbari戦艦が現われた。 IvanovaはTrigatiが援軍を待っていたのかと危惧するが、 SheridanはMinbari艦隊はTrigatiを捜索しており、 亜空間で待機していたのを彼が呼んだのだと説明した。
新たに現われた艦がTrigatiに降伏を命じる中、 SheridanはIvanovaに説明を続けた。 Minbari戦闘機が追尾できたのを知って、 彼は彼らがわざと破壊されようとしているのに気がついた。 Trigatiは12年の間故郷に帰れないまま放浪を続け、 戦争によらない戦いか、不名誉な降伏かを迫られていた。 彼らはBabylon5の攻撃によって名誉の戦死を遂げ、 殉教者になることを望んでいたのだ。
Trigatiは降伏を拒否し、亜空間へ逃げようとジャンプポイントを開いた。 それに対し、もう一方の戦艦はTrigatiの船尾をビームで切断し もう一度降伏を命じたが、彼らはただ一言「名誉」とだけ答えてその場で自爆した。
SheridanはMinbari艦の艦長に感謝の意を伝えたが、 艦長は自分たちにとってこれは悲劇であり、Trigatiの英雄たちのために喪に服す、 おまえの名は決して忘れない、と言い残して去った。

自室で荷物を開けていたSheridanは様子を見に来たIvanovaに、 ここの司令官に任命されたとき自分はそれを大きなチャンスと思っていたがそれは間違いだった、 自分がここに来た事がTrigatiを呼び寄せ、今回の危機を招いてしまったと言った。 さらに彼は、「SinclairはGrey評議会が初めて出会い、Minbari人の魂を持つ人間として 彼らに信頼されていた。 この件を大統領に報告したが、彼はこの話を信じなかったし、自分も半信半疑だ。 しかしMinbari人はそれを信じていて、それが Sinclairがここの司令官に据えられていた理由だ。 もし彼がここの司令官を続けていれば今回の悲劇は起こらなかった。」と話し、 自分の責任でない事で自分を責めないようにとIvanovaに慰められた。

LennierはDelennの部屋で蝋燭をささげながら彼女の繭に話し掛けていた。
「あなたに命じられた通り彼らに説明したが、最後までは話せず残念です。 再び強大な敵が現れ、預言では双方の種族が協力しなくては暗闇は倒せない。 地球人は自分たちで発見するだろうが、もし間違っていたら皆が滅びる。」 彼がその場を立ち去った後、繭に裂け目が出来てそこが動き、 中から液体が滴り落ちた。

KefferはIvanova, Franklinとナイトクラブで食事を取っていて、 新司令官についてどう思うかを尋ねていた。 二人は彼はうまくやっていけると思うと答え、 Franklinは最後に見たとき彼は司令室でスピーチの準備をしていたと話した。
その頃司令官は誰もいない司令室で幸運のスピーチの最後を話しており、 24時間以内に終了する事ができた。


印象に残ったシーン、台詞

Sinclairが地球に呼び戻され代理で指揮を取っているIvanovaが、 彼女を取り囲んで色々な苦情を申し立てる異星人大使たちに我慢の限界に達して 移動チューブの中でまくし立てるシーンはかなり可笑しい。 大使たちは彼女の剣幕にすっかりびびっていた。
到着したSheridanに指揮権を渡すとき、彼女は本当に喜んで渡していたようだ。

It was an early earth president, Abraham Lincoln, who best described our situation.
"The dogmas of the quiet past are inadequate to the stormy present."
The occasion is piled high with difficulty, and we must rise to the occasion. We cannot escape history. We will be remembered in spite of ourselves. The fiery trial through which we pass will light us down in honor or dishonor, to the last generation. We shall nobly save, or meanly lose, or last best hope of Earth."
嘗ての地球の大統領Abraham Lincolnが、我々の現在の状況をうまく評している。
「平穏な過去の理論は、激動の現在を律するに足りない。」
この現在の危機に直面して、我々は時局に応じなければならない。 歴史からは逃げられない。 我々は意思に関わらず将来まで記憶される。 今経験するこの試練は、我々を永遠の歴史に映し出し、 名誉か不名誉かの審判を下すだろう。 地球の最後の希望が守られるか失われるかは、我々に掛かっている。
-- 無人の司令室でのSheridanの「幸運のスピーチ」の後半。


Memo

Hague将軍がSheridanに告げた「もう一つの任務」は、普通に考えればもちろん Babylon5の司令官への就任である。 しかし実はさらに秘密の指令があった事が、後にSheridanの口から明かされる。 (#33 "All Alone in the Night")

KalainがHedronnを脅迫する場面で、 Hedronnは「Minbari人はお互いを決して殺さない」と言うのに、 Kalainは「今は未だな」と答える。 Hedronnの言った事は事実で、ValenによるGrey評議会設立以後は これまでMinbari人同士での殺人は全くなかった。 しかしKalainの言ったように、規則はいつか必ず破られる。

HedronnがTrigatiとKalainの事をSheridanはおかしいと言って 彼がGrey評議員である根拠にしているが、 考えてみると他国の大佐クラスが知っていることを 本国の中堅役人が知っていてもおかしくないはずだ。 どうやらMinbariではカースト間の情報のやり取りは極めて限定的らしく、 それぞれが半ば独立国のようになっているらしい。 それがMinbari「連邦」の理由かもしれない。

一方で逆に考えると、Sheridanはその地位に比べて秘密に詳しすぎる気がする。 後のエピソードで、彼が自分の趣味は秘密集めだというシーンがあるが、 それがこの説明になっているのかもしれない。

SheridanはBlack Starを罠にかけた事を後悔していないと言うが、 実はMinbariの救難信号を送って彼らをおびき寄せるという あまり誉められない作戦を使っている。

地球-Minbari戦争は、Minbariでは聖戦と呼ばれている。 これは立場を変えれば物事が異なって見えるという事を象徴している。

Sinevalの自決に関しては"Legacies"で 既にDelennが一度言及している。
Sinevalは単にTrigatiの艦長ではなく、 Branmerと共にMinbari艦隊の指揮官、おそらくは戦士カーストの最高指導者 (Shai Alyt)だったらしい。 従ってKalainも単にTrigatiの副長よりも地位が高い(Alyt)と思われる。

MinbariのSharlin級戦艦は、全長1600m, 総質量44.4*10^9kgの Minbari艦隊の主力艦で、「若い種族」たちの内では最強の戦艦である。 重力発生装置を備え、20年もの長期の航行が可能である。
また、Nial級戦闘機は全長22mで、StarFuryと比べ二倍以上の加速性能を持つ。 三門の重粒子砲を備えている。

Agamemnonという艦名は、フランス革命戦争時に英国のNelson提督(もちろん当時は艦長)が 指揮していた戦列艦の名前である。


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