Babylon5 #75

#75 Atonement

粗筋

DelennをMinbari本星に連れ戻すためのSharlin級戦艦がBabylon5に向かっていた。
ZackはMinbari人の仕立て係に囲まれて、新しい制服のサイズ合せをしていた。 彼はDelennが指令スタッフに贈ったこの制服を着るのを嫌がっていて、 付き添いのLennierに色々と文句を並べる。 それを聞いていた仕立て係の一人が、隙を見て彼に仕立て針を突き刺した。 Lennierはそれがわざとやったと認めて、注意しておくとZackには謝ったが、 仕立て係にはMinbari語で「よくやった、今度はもっと太い針で」と言っていた。 Zackは彼の問に答えて、 この制服を受け入れるとGaribaldiがもはや主任に復帰しない事を 認めたような気がすると説明した。

Minbariからの使節を迎えたDelennは、 Johnに話をするために自分の出発を一日待って欲しいと懇願した。 彼らは同意したが、彼女は彼に全てを伝えるべきだ、 "Dreaming"の結果次第では彼女は二度と彼の元に戻れないのだから、と諭した。
Ivanovaが緑Draziのリーダーのサッシュ をつけて廊下を歩いていた。 彼女は司令室からの通信に、Draziの宗教祭に招かれていると答え、 はちゃめちゃな騒ぎになりそうだと楽しんでいる様子だった。

FranklinはG'Karに新たに作った義眼を装着していた。 G'Karは目の色には不満だったが、再び両目で見る事が出来るようになった事に感激する。 さらに義眼を取り外しても、その眼を通して見る事が出来る事を知り、 早速義眼で自分の顔を見て喜んでいた。

SheridanはDelennに呼ばれて彼女の部屋へ向かっていた。 Delennの部屋の直ぐ横の移動チューブから、乱闘でもしたような姿のIvanovaが 中で気絶して倒れているDraziの頭を突き飛ばし、杖を持ってよろめき出てきた。 びっくりする彼に彼女は「何も...訊かないで」と言い残し、 ふらつきながら立ち去った。
気を取り直した彼がDelennの部屋に入ると、 魅惑するような黒いナイトドレス姿の彼女が奥の間から姿を現して微笑んだ。 彼女は彼を夕食に誘った後、女性が男性を三晩見守るMinbariの伝統を思い出させ、 一晩目はWhiteStarの中で、二晩目は彼がZ'ha'dumに行く前に過ごしたから、 今夜三番目を過ごしたいと提案した。 そして明日Babylon5を発ってMinbariに向かい、 しばらくそちらに滞在する事を打ち明けた。 今夜の約束を交わして出て行こうとする彼に彼女は一瞬なにか言おうとするが 結局何も言えなかった。

SheridanはFranklinとMarcusを呼んで、Clarkの宣伝戦に対する反撃の計画を説明していた。 二人は火星に潜入し、レジスタンスと落ち合って彼らに協力の意思を伝えることになった。 Franklinは行方不明となった司令官の父の情報も探る事を申し出たが、 Sheridanはそれは危険すぎると言い、却下した。

眠っているJohnを見守っていたDelennは彼の寝顔をそっとなで、 別れを告げて部屋を出た。 直ぐ外の廊下には事態を察したLennierが待っていて、 何が有っても彼女の傍に居ると誓った自分も、彼女と一緒にMinbariへ向かうと言う。 始め彼女は、Dreamingで見せる彼女の別の一面を見たら 彼は幻滅するだろうと言ったが彼の決心は変わらず、 二人は迎えの船に向かった。

Minbari本星では聖職者カーストの指導者たちがDelennを待っていた。 一族の指導者Callennは、彼女が種族の伝統を破って異種族との結婚を 行おうとする理由を皆の前で明らかにする事を求めた。 「心の声に従いたいのです。」「愛だけではいけないのですか。」 と問い返す彼女にCallennは、 このような行動には本人にも気づかない隠された理由があるはずだと言い、 Dreamingを行ってその理由を見出すように求め、 もしその理由が皆の納得の行くものでなければ、 彼女がSheridanとの関係を絶つように要求した。

LennierがDreamingの間Delennに付き添って彼女を守る事になり、 二人は案内に導かれて煙を立てる液体を飲んだ後、 霧が立ち込めた「ささやきの間」に入った。 これは彼女にとって二回目のこの儀式の体験で、最初はDukhatの付き添いとしてだった。 「偉大なお方だった...」彼女はその当時の記憶を思い出して言った。

まるで呼吸をしていないかのようなDukhatが心配になってそっと近づいた彼女に、 彼は「生きておるぞ」と答えた。 そして恐縮して謝罪する彼女に名前を尋ねる。 彼女が「Delennです」と答えると、 彼女の属するMir家は彼女が知っている以上に偉大な家系だと教え、 「恐れる事は無い、ただ私と共に踏み出すだけだ」と励ました。
場面は地球軍の攻撃を受けるGrey評議会の乗る戦艦に変わった。 死んで床に倒れているDukhatを抱きかかえたDelennは、 大声で悲鳴を上げた。
現実の世界でも倒れて悲鳴を上げるDelennを、 Lennierは抱きかかえて励ましていた。 再び彼女は別の記憶の中の場面に入っていた。
Dukhatは従者の内から彼女を指名し、Grey評議会の場に連れて入った。 彼は未知の種族である地球人と接触すべきかを評議会に図っていたが、 三つのカーストはそれぞれ異なった理由を挙げて一致して反対していた。 彼はDelennを評議会の輪の中に立たせ、彼女がどう思うかを述べさせた。 始め恐縮していた彼女は彼の叱責を受け、 「未知の物が自分たちへの宇宙からの贈り物なら、それを調べてみるべきでは」と答える。 Dukhatは、彼女の示した子供のような好奇心を失ったのかと評議会を叱責し、 明日の朝までに最終的な結論を出せと言って評議員たちを下がらせた。 評議会の場から出たDukhatは彼女に、おそらく評議会は意見を変えないだろうが、 愚かな行動をさせてそれから学ばせる事も必要だと言い、 さらに評議員たちは恥をかかされたので彼女を迫害するだろうから、 自分が彼女を弟子にして導いてやろうと言った。
時は流れ、成長したDelennは新たにGrey評議員に任命された。 彼女が進み出てTriluminaryに手をかざして誓いの言葉を述べるとTriluminaryは輝き、 それを目の当たりにした他の評議員たちの顔に動揺の色が見られた。
儀式の後、彼女の部屋に立ち寄ったDukhatはGrey評議員への就任を改めて祝福し、 彼女がTriluminaryがあのように輝いた事は今まで無かった事ではと尋ねると、 TriluminaryはValenによってはるか未来からもたらされたと伝えられており、 自分が彼女を弟子に選んだのは偶然ではない、 今日の事で確信したと言い、さらに何かを言おうとしたとき、 警報が発せられ、二人は評議会の場に急いだ。
未知の種族の船団がMinbari宙域に入ってGrey評議会の船に近づいて来ていた。 その映像を見たDelennはあれは地球人の船だと言い、 別の評議員が、呼びかけて来ているが言語が通じないので、 戦士カーストの伝統に従って敬意を示すために砲門を開いて接近中だと報告した。 そのときDelennは、別の方向からSoul Hunterの船団が近づいているのに気づく。 彼らは偉人が死ぬ時にその魂を回収するために現われると言われており、 気がついたDukhatが砲門を閉じるように命じるが既に遅く、 評議会の戦艦は地球艦隊からの砲火を浴びて破壊された。 大きく破損し混乱する評議場で、 重傷を負ったDukhatを抱きかかえたDelennは助けを求めていた。 彼は彼女に何かを伝えようと口を動かして彼女の腕の中で息絶え、 彼女は悲鳴を上げた。
暫くして別の評議員が死んだDukhatを抱えたままの彼女に近づき、 事件の真相を調査するか地球人に報復するか、評議会の意見が二分しており、 彼女の決断にかかっている事を伝えた。
彼女は「警告も無しにいきなり攻撃してくるなんて卑劣だわ! 獣以下よ! 慈悲など無用だわ! 彼らを基地まで追い詰め、皆殺しにするのよ!」と叫んだ。
Lennierは彼女の命令で地球との戦争が始まってしまった事を知り、 これが彼女の知られたくなかった秘密だったのですね、と尋ねた。 そしてこのとき彼女は冷静な判断を出来る状態ではなく、 彼女に罪はないと慰めるが、 彼女は自分が命令を下した事に変わりはないと答える。
Grey評議会の決定によってMinbari艦隊は地球軍の基地を攻撃し、完全に破壊した。 その光景を見てDelennは自分の怒りに任せた決断の結果を知り、 これ以上の攻撃を思い留まって地球人政府と交渉をすべきではと訴えたが、 Minbari人にとって聖戦となったこの戦争は一人歩きを始めて もはや止められなくなっていた。
LennierはDelennに、彼女は自分の命令で多くの地球人が殺された事に責任を感じており、 それがSheridanとの結婚を決断した原因だと皆は思うだろうと指摘した。 彼女はこれまで自分に仕え、自分の行動を見続けていた彼は、 そうではなくJohnへの純粋な愛によるものだと知っているはずだと言うが、 そのときささやきの間のドアが開いてCallennが現われ、 Dreamingは終わった、明日の朝何を見たかを皆に説明するようにと言った。

彼女は眠れぬ夜を過ごしていた。 Dukhatの死の場面を何度も思い返し、 突然彼が最後に何を言おうとしたのかに気がついた彼女は起き上がり、 部屋を飛び出した。 Lennierを従えた彼女はささやきの間の入り口に戻り、 再び儀式の飲み物を手に取った所で Callennが慌ててやって来て、このような事は許されない、Dreamingは終わった、 と止めようとする。 彼女は「何があったか真実を知りたくないの?」と問い返して彼にも飲み物を手渡し、 三人はささやきの間に入った。
なおも抗議するCallennの手とLennierの手を取り、 Delennは「なにも恐れる事はない、いっしょに踏み出すだけ」と言った。
彼女の腕の中で息絶えようとしているDukhatの最後のほとんど聞き取れなかった言葉は、 「おまえを選んだのはおまえの血筋だ。おまえはValenの子だ」だった。

翌朝DelennとCallennの前に、Lennierが評議会の保管庫から無理を言って借り出した 古文書を持って現われた。 Delennは、Valenは千年前のShadowとの戦争の後行方不明となり、 彼の遺体も見つからないし、そもそも本当に死んだのかも判っていない、と説明を始める。 Valenの正体は地球人のSinclairであり、彼は結婚した後どこかに迫害を逃れたが、 その子供はMinbariに戻った。 その子孫が増えて現在のMinbari人の中に地球人の遺伝子が混じっている。 Dukhatは古文書の記録を見てそれを知っていたのだと言い、 既に自分には地球人の血が混じっており、Triluminaryが輝いたのもそのためだ、 従って種族の純粋性は失われており、自分がJohnと結婚して子供が生まれても 問題は何も無いと主張した。
Callennはその論理を認めながらも、 この事実を公表すればMinbari社会は大混乱になると言い、 とりあえず、 戦争の敗者に勝者が復活と繁栄の象徴として女性を贈るという Minbariの古代の習慣に従って、 彼女を地球への贈り物とみなしてSheridanと結婚すればよいという策を示した。

一週間振りにBabylon5に戻ってきたDelennは、 ドッキングベイまでJohnが迎えに来ていたので少し驚いた。 Lennierが気を利かせてその場を離れた後、 DelennはMinbariでの件は全て片付いたと言い、 自分の留守中に何か変わった事が無かったか尋ねた。 Johnは何も無かったし、FranklinとMarcusからも連絡が無いが、 便りの無いのは無事の証拠だろうと答えた。
その頃FranklinとMarcusは貨物船の狭い無重力の船室の中で 火星を目指していた。 居心地の悪さをこぼすFranklinに対しMarcusはご機嫌で、 Franklinの制止を無視して歌を歌いだした。


印象に残ったシーン、台詞

"They serve no mercy. Strike them down, follow them to their bases and kill them all, all of them, all of them! No mercy, no mercy!!"
-- 地球との開戦を決定付けた怒りに満ちたDelennの言葉。 こう叫びながら相手の評議員の胸を両拳で叩く彼女の姿は印象的だ。 始めは偉大な師Dukhatの目の前での死を嘆き悲しんでいたのが、 自分の言葉によって怒りを増幅し、自分自身を抑えられなくなって行く。

一方でDukhatに呼ばれ始めてGrey評議会の場で発言させられたときの初々しさも見もの。 始めはひたすら恐縮していたが、緊張しながらも自分の意見を堂々と述べていくにつれて 自信に溢れた態度に変わって行く。


Memo

Minbari側がDelennを連れ戻しに来たのは、 前話でのISNの放送内容を見ての事だろうか? そもそもMinbariはISNを観ているのだろうか?

結婚前のMinbariの習慣の話は "Shadow Dancing"に出てくるが、 WhiteStarの中での一晩目というのは、 同じ回のSector83への行き帰りのどちらかだろうか? あるいはもっと以前の "Messages from Earth"で 二人がGanymedeへ向かった時だろうか?
また今回の夜にDelennはJohnの「眠っている間に立ち去った」訳だが、 "Shadow Dancing"での彼女の説明では それは男の真の顔が気に入らなかった証である。 Johnは彼女が黙って立ち去った事にかなりのショックを受けたのではないだろうか?

Minbari人には頭髪が存在しないが、Dukhatを始め何人かのMinbari人には髭がある。 もしかするとこれも地球人の遺伝子のせいだろうか?

DukhatはGrey評議会全員の反対を押し切って自分の意見を通す事も出来ると 若いDelennに語ったが、最高指導者と評議会の関係はどうなっているのだろうか? Dukhat自身はGrey評議員ではないから、この場面だけ見ると Grey評議会は単に最高指導者の諮問会のようにも見える。 最高指導者の力量によるのかもしれない。

Dukhatは自分の前で目を伏せているDelennに 顔を上げて自分の目を見るように言い、 それは失礼に当たると言う彼女に、 「自分の目を見られない弟子を持つ訳にはいかない」と言うが、 この言葉はDelennが始めてLennierに会った時に 言った言葉と同じである。 恐らく彼女にとって尊敬するDukhatのこの言葉が印象的だったために、 Lennierに同じ事を求めたのだろう。

DelennはValenが大戦争の後迫害を逃れて姿を消したと言ったが、 なぜ偉大な指導者が迫害を受ける事になったのだろう。 元々異星人であった事が何らかの理由で明らかになったのか、 迎えた妻が異星人だったのか。 SinclairがBabylon5司令官からMinbari大使に転出する 直前に、Catherineとの結婚を決意していたのを思い出させる。

恐らくCallennのアイディアは聖職者カーストには受け入れられても 戦士カーストはむしろ自分たちに対する侮辱と取るだろう。 この発表が両カーストの対立を決定的な物にする可能性がある。
また、この提案を聞いた時のDelennとLennierの表情が微妙だった。 Delennは単にこれでJohnとの結婚が正式に承認されたと喜んだのだろうか。 それとも「なんて馬鹿な提案をするんだろう」と呆れた表情だったのだろうか?

Zackに針を刺したMinbari女性は、彼がMinbariのファッションセンスは Vorlon以下だと暴言を吐いたのに怒ったようだが、彼女は英語が判るのだろうか? また、彼の後ろで顔を見合わせている他の仕立て係たちの表情が可笑しい。

聖職者カーストの前でJohnとの結婚を望む理由を尋ねられたDelennの 「心の声に従いたいのです」という答えは、 嘗てGrey評議会の場で 彼女が指導者にならずにBabylon5に留まる理由として上げていたものと同じである。 このときは予言に従って「変化」する事がその使命と考えていたが、 こうなってくるとJohnとの結婚(して両種族の血を引いた子孫を残すこと)こそが 最終的な使命なのかなとも思えてくる。

Delennを初めとするMinbari人の一部に地球人Sinclairの血が 流れている事が明らかになったが、 #4 "Infection"において SinclairがIkarra 7の生体兵器Tularに、 「この世に遺伝的に純粋な種族など何処にも存在しない」 と呼びかけていたのが伏線になっていたようだ。

Dukhatの死の直前に現われた船団には#2 "Soul Hunter"で ステーションに現われたSoul Hunterが乗っていた訳だが、 DelennがDukhatの魂を回収しようとする彼の前に立ちふさがったという話とはやや違う。 "Soul Hunter"での話はあくまで比喩的なものだったのか。

今回のDelennの記憶のシーンにあるように、 地球とのファーストコンタクトにおいてMinbariの旗艦は地球の戦艦の攻撃で 簡単に大破した。 これは彼らが全く攻撃を予想していなかったためである。
他の多くのSF作品と異なり、Babylon5の世界には、 防御スクリーンやシールドの概念が存在しない。 従って喩え技術的にかなり優位な種族の艦でも、 敵の主砲の直撃を受ければ一撃で破壊される。 (はるかに進んだ種族であるVorlonやShadowの艦の装甲は、 ビーム兵器にはかなりの抵抗力を示すが、 それらでも核兵器の直撃ではあっさり破壊される。 #72 "Into the Fire")
Minbariが地球との戦争で一方的に勝ったのは、 その艦の加速性能の違いとステルス技術が 原因である。

"The Shrine of Delenn"の記述によると、 Delennが生まれたのは地球暦で2228年、 そして彼女がGrey評議会の一員になったのは2247年の初めとなっている。 すなわち彼女は地球年で弱冠19才の若さで、 Minbariの最高統治機関の一員に選ばれた事になる。 これはMinbariの歴史においても異例の若さであった。
またこの生年から、彼女はこの時点で33才と判る。 意外な事に、彼女はJohnより大分若かった!


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